
東京矯正管区・公認心理師実習受付中情報(New!)なぜ司法は必須分野なのか
以前にも法務省矯正局が公認心理師養成のため、実習受入れをするという記事を書いたのですが、ふと東京矯正管区のホームページを見たら新着情報として公認心理師実習を行うと正式に掲載されていました。
矯正局管轄下にある少年鑑別所、少年院、刑事施設で実習受け入れをする際には見学および担当官からの説明があることを記してあります。
以前聞いた際には少年や受刑者に直接接することは難しい(それはプライバシーの観点から確かにそうだと思います)、ただ模擬心理テストなどは可能かもしれないという回答でした。
この辺りは実習大学・大学院から要望していくことが可能な領域だと思います。
東京矯正管区内の鑑別所、少年院、刑務所など幅広く受け入れをしていて、できれば1日と言わず長期間実習ができたら学生さんには勉強になるだろうなあと感心して見ていたところです。
元々公認心理師試験そのものの中には心理職活動主要5領域の中に司法を重要な柱として含んでいます。
「私、リハビリ施設で心理検査やるのが仕事なの」
とか
「市役所で乳幼児発達検査や行動観察するのが仕事なのになあ」
という心理職の人々にとっては司法分野は「試験に出るから勉強しなくちゃいけないけど、そのあとは役に立たない」領域として扱うのはもったいないなあ、と僕は思うわけです。
アメリカの研究と日本の嗜癖治療専門クリニックのワーカーの話では、一生の間に小児に被害を及ぼす性犯罪加害者は1000人以上の被害者を生み出すという結果が掲載されています。
犯罪心理学の権威、エビデンス・ベイスド・プラクティスの研究者の原田隆之氏は性犯罪者の更生率は高く、それは原田氏の治療によって3パーセントにまで減少させることができたと自ら書いていました。
性犯罪については薬物的去勢と認知行動療法が効果的とされていて、どんな試みでも加害者臨床のためには行われるべきだと思うのですが、加害者が申告する被害者数と「効果があった」とされる治療家側の申告の乖離に疑問を持つのです。
捕まらないで上達していく能力は多分高まります。
そして検挙率が少なくなる、この相違を研究することはほぼ不可能と思います。
ところで幼少期に性被害に遭った患者さんのPTSDは凄まじいまでに激しい症状を示します。
心理療法家は被害者臨床に目が向きがちですが、もし効果的な加害者臨床を行うことによって被害者を減らすことができれば医療におけるPTSD患者さんも激減すると思うのです。
第1回公認心理師試験北海道追試では犯罪者更正のためのRNRモデル(再犯riskに処遇密度を合わせ、犯罪を誘発する要因のneedに呼応させ、社会復帰支援のための応答responsebility)が出題されていました。
RNR理論の論文にも明記してあったのですが、どんなに効果的な処遇計画を立てても犯罪をゼロにすることは不可能です。
ただし司法矯正心理職は決して諦めてはいけない分野だと思いますし、だからこそ公認心理師試験分野ともなっているのでしょう。
PTSDは実に多彩な症状群の源になっています。
解離、フラッシュバックだけでなく、あらゆる依存症や身体化障害の原因ともなり得ます。
ほかの基礎疾患や精神疾患と重奏すると治療は困難を極めます。
福祉領域にかかわる人は対象者が被害者になり得ることも加害者になり得ることも知っています。
教育分野における非行は警察、家裁に加害者を引き渡したから終わり、という単純なものではありません。
あらゆる領域にかかわってくる司法矯正分野、人間の意思能力、精神状態と密接にかかわってくる家事手続法(旧家事審判法)は、どの心理職が働く分野でも必要となることが想定されます。
家庭裁判所調査官や法務教官、保護観察官は心理卒でなくてもなれるわけです。
幅広い分野の領域の知識が司法、行刑、保護観察に必要だからでしょう。
その上で、司法が心理職の必修分野としての大切さも理解できます。
今後公認心理師実習の中で司法、矯正分野での研修が多くなればなあとも思うわけです。
最高裁家庭局は今のところ学生向け公認心理師研修は考えていないようですが、成人や民事裁判、児童福祉に関する成人事件の裁判の傍聴などは心理職としての幅を広げることにもなるだろうとも思います。
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