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◯ 大津レイモンド淡海保育園事件・マスコミが作り上げるPTSD

2019年5月8日、大津レイモンド淡海保育園の園児の列に車が突っ込んで2人の園児が死亡したという大変痛ましい事故が起きました。

この記者会見を僕も見てみたのですが、記者会見直前にうつむいていた若松ひろみ園長が、記者たちの質問責めに遭う度に泣き崩れていくのを見ました。

何回も僕が仕事で見てきた、惨事に遭った直後の被害者の急性ストレス障害ASDからPTSDに間違いなく移行していく人だと直感的に思いました。

心理的に強力な援助を必要としている人が追い詰められていく様子を見なければならなかったのは残念です。

そもそも論で行くと「記者会見は必要だったのか?」ということです。

そして30分近くの長時間の会見の中で「事実確認」という名の質問はどれも園児を失った、辛い被害者の立場にある保育園には強烈でネガティブなインパクトを与えるものでした。

信号待ちの隊列は歩道の外側にいたのか内側なのか(内側でした)、保育園では何歳児から外遊びの散歩をさせるようにしていたのか、「レイモンド保育園には園庭がなかったから外に散歩に行ったんですね?」とか、散歩のコースは何コースあったのか、手をつないでいたのか(つないでいました)かなり微に入り細に入り質問が続いていきました。

散歩の時間、コースについて聞くのはこういった急性期のストレスを受けている人にとっては罪悪感を煽る材料にしかなりません。

こういった路上の散歩をする際には何か用意しなければならないものがあったのではないか(何を?2歳児の散歩にヘルメット着用をさせるとでも?)この散歩ルートは危険で昔交通事故が発生したこともあった。交通量が多い道路という指摘も記者からありました。

そもそも事故が起きたことが全くない道路は存在しないわけですし、また、ここではきちんと理事長が、この道路は渋滞がいつも起きているので車の流れがゆっくりでむしろ安全だとも答えています。

若松ひろみ園長が泣き崩れているにもかかわらず記者会見は続き、理事長、副理事長が園長の精神状態を心配して記者会見にストップをかけようとしても記者の質問は止まることなく、次々と質問のための挙手が続いていました。

若松園長としては「そもそもレイモンド保育園には園庭がなかったのが悪かったんだ」と自分の責任ではないことまで自責の念にとらわれるでしょう。

「その日のその時間にその散歩コースになったから私が悪かった」「2歳児を散歩させてよかったのか?引率の人員は足りていたのか?」(引率の大人3人とも入院中、高速の鉄の塊が突っ込んできたら大人だろうが子どもだろうが無事でいられるはずはありません)など全てを振り返って自分を責めるでしょう。

PTSDの被害者のことを考えてみます。

例えば集団加害者から性的暴行を受けた被害者は「夏だからといって薄着をしていた、ミニスカートをはいていたのが悪かった、お化粧がいつもより濃いのが悪かった」「もっと明るい道を選んでいて、途中でいつも入るコンビニに入らないから悪かった」などと自分を責め抜きます。

警察や検察の取り調べ、そして裁判になると被告人の弁護士から、ひどい質問が次々と浴びせかけられます。

「それじゃ、その時車道側を歩いていたのは誰かから声をかけて欲しいと思ってナンパ待ちをしていたのでは?」「車に手を引かれて乗ったのは、別に被告人も無理やり力ずくでなかったと言ってますよ?あなたが自分の意志で乗ったんでしょ?降りる機会は信号待ちもあったんだからいくらでもあったでしょ?」

など、被害者の自由意志だったのではないかと事実を捻じ曲げて論駁しようとします。

この記者会見もまた同じで、被害者を追及して悪者探しをしなければ気が済まないというマスコミ体質を示しています。

若松園長だけでなく、子どもの遺族、傷害を受け目撃した園児たちや保育士さんたち、その全ての人々が心理的な援助を必要とする人たちです。

アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5ではこの人たちは全てPTSDに罹患するハイリスク者です。

レイモンド保育園が悪かったからこの事故が起こったとは思えません。

若松園長だけでなく、理事長、副理事長は記者会見で気丈にしていましたが、マスコミに翻弄されてPTSDを発症する可能性もあるわけです。

実際、事故などで亡くなった労災遺族に対応して怒鳴り散らされた担当者がPTSDを発症した例も多いです。

PTSDの診断基準からは除外されているのですが、3.11の際テレビは何度も何度も津波が家々や全てを押し流す映像を繰り返し放映していました。

僕のクライエントさんは「見ているうちに気持ち悪くなって」と言う人々が多かったので僕は「それじゃ、もう見るのをやめてくださいね」と言っていました。

マスコミが人の心をえぐるのは簡単なことです。

精神科医や心理職が性被害者の治療を一生かけてやる間に小児を対象にする加害者たちは1人当たり数百人以上の犠牲者を出しています。

マスコミもこれまでに数えきれないほどのPTSD被害者を出しているでしょう。

「報道の自由」「知る権利」という言葉を濫用して人間の心という最も大切な事柄をないがしろにすることは決して許されることではありません。

心理カウンセラーがこのあと派遣される予定ですが、マスコミが荒らした人間の心という跡地をその前の状態に戻していこうという作業だけでも大変だろうと大変残念に思うのです。

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