
ギャンブル依存症・金融庁マニュアルに公認心理師がかかわる可能性は?
公認心理師の活躍の場は医療、教育、福祉、産業、司法の5領域と大別されていますが金融領域にもかかわる可能性はあるのでしょうか。
この度金融庁から2019.3.30に発表された「ギャンブル等依存症に関連すると考えられる多重債務問題に係る相談への対応に際してのマニュアルについて」がネットニュースで「やり過ぎ」「踏み込み過ぎ」との批判が出ています。
このマニュアルはかなり細かなものです。
お金を借りに来た人がいる。
どうもなんだかこの人はギャンブル依存症のようだ。
どうにかこの人を治療させよう。
→精神保健相談機関へGO!
という流れのマニュアルです。
なかなかこのマニュアルはダイナミックなもので、まず事前に地元保健所、精神保健福祉センターからギャンブル依存自助グループの情報提供をしてもらい、そのグループに通っているメンバーが借金しに来た時に介入しよう、というものです。
自助グループの匿名性はどうなってしまうのだろう、精神保健福祉機関と民間の銀行が情報共有してもいいの?
というところがまず疑問点です。
そして網を張って待っていた相談者が来訪します。
そうするとギャンブルへの依存程度、していない時のイライラ、やめようと思ってもやめられない、コントロールを失った状態にあるか、そのことによって社会的にまずい状態に陥ったことがあるかなど、DSM-5を参照した質問をするように勧奨しています。
銀行は融資の可否を判断する仕事で、担保があるか、金を貸しても貸し倒れがないか審査をする機関です。
そう考えると実はぶっちゃけ、銀行としてはギャンブル依存症で借金癖がある人が資産家の父親を連帯保証人にしてお金を借りてくれたら、1億でも2億でも貸してしまえばいいわけです。
そこで資産価値がある土地を抵当物件にして差し押さえができたら銀行にとってはとてもオイシイいい融資でしょう。
金融庁が厚生労働省と協働してギャンブル依存を食い止めるという理念は理解できます。
でもお金を借りに来た人がいきなりインテークで初回カウンセリングを心理的に踏み込まれちゃってもいいのかな?と思うわけです。
依存症の人が依存行為をすると脳内にドーパミンが放出されて中枢神経が興奮するという依存症のメカニズムまで説明されています。
そして依存症チェックリストまで掲載されていて、点数評価もできるようになっています。
非専門家がアセスメント、査定をするという、いろいろと問題を感じるマニュアルです。
1.銀行の役割
銀行は融資を実行した際に確実に回収できるかどうかを見極める機関です。
さっき述べたとおり、先祖代々受け継がれていても駅前の一等地がギャンブラーのドラ息子のために差し押さえられたら、とても銀行には大きな利益がもたらされます。
そこで「ちょっと待ってください、あなた、ギャンブル依存症ではないですか?このチェックリストの当てはまる項目にマルをつけてください」
「少し話を聞かせてください。どんな時にギャンブルをしたくなりますか?」
というような展開があり得るのでしょうか?
「お前、金借りに来たんだから親父を保証人にするって言ってるだろ!」と言い返されてしまうのではないでしょうか。
2.依存症の人の嘘
依存症の人は内心とても苦しくてもゆったりとした表情で嘘をつける人が多いです。
漠然と事業を始めたいと言い、銀行員に事業計画書を出してくれと言われたら出すかもしれません。
なんらかの見積書も手に入れることは可能です。
その他いろいろ手口はありますがあえて書かないことにします。
アルコール依存病棟でも共有冷蔵庫の牛乳パックにストローを差しておいて、中身は日本酒、という事が昔はよくありました。
依存とは嘘と隠蔽のともなう本人にはどうにもコントロールできない病気であることが多いのです。
3.そもそも金融機関は心理相談機関ではない。
優しくて相談者に言い聞かせて、地元の名士の連帯保証人の父親とよく話もして息子さんのギャンブルをやめさせようとする、地域に根ざした素晴らしい銀行員はいると思います。
このマニュアルだと融資窓口の銀行員全員が有能な心理カウンセラーでなければなりません。
本職の心理カウンセラーでも依存症治療への動機付けは大変難しいものです。
うーん、ならばいっそのこと資格を沢山取らせる銀行に公認心理師を採用してギャンブル依存症対応者にしてしまえばいいと思います。
ギャンブル依存症者への紹介窓口もこのマニュアルにはたくさん掲載されていますが、立ち直ろうとしている人は借金に来ません。
◯ まあ理念はわかります。
ギャンブル依存症の治療は大切です。
ただしなんでもかんでもプライバシーに踏み込むのは筋違いだと思います。
まず国家政策として公営競技で税金を潤わせて破産者を増やしている現状はどうなのよ?
と思います。
某公営競技運営職員は給料の良さと仕事の気楽さにひかれてものすごい志願者倍率でほぼ東大卒しか採用されないとか。
僕が患者さんとして会うのはパチンコやパチスロの人も多いのですが、そのあたりはもっと行政で考えて欲しいかなと。
国家経済の未来を考えると破産者を続出させるよりも特に若年者層の労働意欲を高めて士気を高めることの方がいいと思います。
そのために消費者金融も含めて自動無人機でお金を借りられるとかそのあたりをなんとかするべきでは?と思います。
こういったマニュアルを出してなんとかしたいのならばぜひ金融機関で公認心理師を採用してみてください。
借金の肩代わりする家族を銀行が制止しようかと踏み込んでいけばいくほど銀行は儲からなくなってしまいます。
しっかりした担保があっても本人のことを考えて融資をしないのがいい銀行員と思えるような体制を作れたらマニュアルは生きますが、可能ですかね?
と金融庁にも現場の銀行員にも聞きたいところです。
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