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エビデンス主義原田隆之氏公認心理師記事の問題点
(当ブログ関連記事「公認心理師エビデンス論者原田隆之理論の矛盾について」)  

関連記事その2
頼れる認知行動療法家・原田隆之さん再登場

筑波大教授、原田隆之氏が現代ビジネス2019.3.31号で

「この国で「自称心理カウンセラー」が乱立する現状はようやく変わるか」

という記事で公認心理師についてについて述べています。

公認心理師も業務独占資格でない以上、誰がカウンセリングをしても自由ですし、専門資格を持たないカウンセラーがカウンセリングをしたら悪化したという「エビデンスはいくらでもある」という記述があります。

その言及についてエビデンスを示していないのはまあネット取材記事ということで、10000歩ぐらい譲ってあげていいとしてあげてもいいでしょう。

さて、問題はこの記事の記述、

(以下引用)

心理臨床の世界は日進月歩で、かつて主流とされていたフロイトやユング、さらには最近人気のアドラーのような精神分析学には、エビデンスがないことが、数々の研究の積み重ねで明らかになっている。アメリカの大学のカリキュラムでは、彼らは「心理学史」のなかにしか登場しない。

さらに、精神分析学を理論的基盤とする描画法やロールシャッハテストなど、「投影法」と呼ばれる心理検査もエビデンスを欠いており、正確な検査にはならないというのが世界の常識である。ロールシャッハテストとは、インクの染みをみて性格や精神障害を診断するというもので、実際に受けたことがある人も多いだろう。


(引用終わり)

精神分析学は終わったんですか?

エビデンス(証明力)がないから精神分析的精神療法家のところに通っている患者さんが悪化しているんですか?

確かにアメリカでは精神分析は保険診療範囲外になりましたが、それは本格的な精神分析治療には時間がかかるからという、根幹治療へのアメリカの医療保険財政事情から研究を進めさせたのもご存知ない?

カウンセリングではユングやフロイトの流れを汲んだ個人の人格的理解はカウンセリング場面や性格心理学でも心理テストにも大きな影響を与えているのですが、それを否定してしまうのでしょうか。

原田センセはじゃあ認知行動療法イチオシですが、PTSD治療に来る持続エクスポージャー法、治療セッションを2割も3割も脱落してしまう過激な侵襲性が高いメソッドや強迫性障害に対する暴露療法は正しいと考えているのかな、と。

ちなみに僕が知っている優れた認知行動療法家は他流派の否定もしない、物腰柔らかな精神療法家です。

元々PTSD、強迫性障害はかなりの自死率がある危険な病です。

そこを治療を辛くて辛くてそれでも頑張って効果があるから必死に頑張って来ようとした人たちの3割が脱落してもエビデンス外として弾かれて、「あれ?その人たちに対する救済措置は?他の心理療法家への紹介はしたの?」というと、どの論文を読んでも何もせず見捨てているだけです。

原田氏はその著書、心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス第4部ではエビデンスと心理療法について滔々と論じていますが、ああでもない、こうでもないと苦しい論調に読めてしまうのは僕だけでしょうか。

認知行動療法以外の心理療法、精神分析や原田氏が目の敵にしている箱庭療法に治療エビデンスがあったという論文をことごとく撃破したかのように書かれています。

ロールシャッハテストについてはあの、公認心理師試験試験委員副委員長の小川先生は包括的エクスナーシステムの日本への普及の第一人者ですよ?

ロールシャッハテストについては山ほどのエビデンスがあります。

エクスナー.J,はインクの染みを何に見えるか、色合いを変えてみたらどうなのか、トークンエコノミー(報酬)を与えた際の反応数の変化、教示を変えた際の反応内容変化はどうなのかなどむちゃくちゃ多くの統計的検証をしています。

で、精神科でもロールシャッハテストは保険診療としても高額な価値が認められているのですが、これがエビデンスなしと決めつけちゃいました。

さて、記事をまた引用します。

エビデンスがないと言われても、長年の間、それを学び、臨床場面で活用してきた人たちは、それを手放すことに激しく抵抗する。そして、「エビデンスだけが大事じゃない」「悪口を言うな」などと感情的に「逆切れ」する。

古い人は仕方ないとしても(本当は仕方なくはないが)、今後もこのような時代遅れのカリキュラムで学んだ人たちが、公認心理師として社会に出ていくわけである。


いや、センセ、描画法にしても箱庭療法にしてもそれ、心理テストですし治療の一環で癒しなので数学のテストを患者さんにやっているわけじゃないんです。

教育相談所に不登校の小学生が周りの、そして児童本人が決死の思いでやってくる、箱庭のおもちゃを見て「面白そうじゃん」と糸口を提供してくれたら心理職は何気ない顔をしながら頭の中はフル回転です。

で、毎回なんとか心を癒しに来るようになった子どもや傷ついたクライエントさんに対して心理職は手を尽くして描画や箱庭を実施して「すごいですね、◯◯さんのこんなところが出ていて素晴らしいですね」

とか、中井久夫先生の共同空間分割法をセラピストとクライエントと一緒に行うのは、もう感性の真剣勝負です。

箱庭に興味を持って向かう子どもに対して

「あ、このおもちゃはね、前のカウンセラーが置いていったの、エビデンスなくてイミないから触らないでね」

って、

馬鹿はいないですよ?

原田センセはすみませんけど、申し訳ありませんけど

勉強不足です。

箱庭にも描画にもエビデンスは出てきています。

あなたは医学博士ですが、医学の最先端、エビデンス重視のfMRI脳画像診断で相当の治療効果が出ているという研究結果が出ているんです。

イメージ療法、催眠、EMDRも相当エビデンスが出ています。

さて、原田センセの結語の引用です。

時代遅れだけならまだよいが、治療においても、検査においても、エビデンスがないものを振りかざして、悩める現代人の「こころ」の問題に対処できるのだろうか。それは自己満足以外の何物でもない。

実際、今回の試験問題にも、カビの生えたような理論や技法の問題が数多く出題されていた。私などは、これらの問題に不正解であった者こそを合格とすべきではないかと思ったくらいである。

このような問題点を改めるためにも、広く公認心理師の存在と仕事を世の中の方々に認知していただき、監視していただきたいと切に願う。

なぜなら、われわれ公認心理師の仕事は、われわれの自己満足のためにあるのではなく、人々の心と社会の健康や幸福のためにあるのだから。


原田センセはバウムテストやPFスタディの問題解けましたか?

まさか解けなかったからこの記事で当たり散らしていませんよね。

以上、僕の率直な感想です。

公認心理師はまだまだ試行錯誤紆余曲折を経て心理職としての資質を問う試験です。

認知行動療法のみが国家資格に必要でその他の心理療法への検証が不要なら
エビデンス療法士を国家資格でなく作ってください。

センセが言うような百花繚乱の無資格心理カウンセラーの一分派として扱われてしまうかもしれませんが、
それは自業自得です。

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