◯ メンタルクリニック・病院選びのコツ
1.はじめに
精神科はほかの科よりも医師と患者さんとの相性が治療にダイレクトに影響します。
また、病院選びの際に大事なことですが、精神科医療も他の医療機関同様細分化している場合が多く、どの疾患ならどの医療機関にかかると効果的だというそれぞれの医療機関の売り物があります。
依存症、強迫性障害、PTSDに特化した医療機関はその疾患の治療が得意だということを売り物にしています。
なので「大阪のA病院では強迫性障害にすごく効き目がある治療やってるみたいだよー」という噂が患者さんたちの間で広まると東京−大阪間ぐらいまで通院する患者さんは多いです。
また、10年来診てもらっている馴染みの主治医に続けて診察してもらうため、引っ越しをした患者さんが関西から東京まで通院するというようなこともよく聞く話です。
つまりそれだけ精神科医療はコストをかけてでも治療を受ける価値があると患者さんがみなしているということになります。
2.ドクターショッピングは悪いことか?
さて、それではどこの医療機関がいいのか、ネットで調べても口コミは悪い噂は掲載できないので患者さんの本音はわかりません。
なので飛び込みで医療機関を探すと運が悪ければ最高に相性が悪いところに当たることもあります。
相性がいい先生や医療スタッフを探して7、8カ所の医療機関を探して転々とするという患者さんは実はザラにいます。
ドクターショッピングというと悪い響きになってしまうのですが、患者さんは切実な思いで医療機関を探しているのです。
なので僕はそういった患者さんや家族の行動を一概に否定することはできません。
3.情報源を探すコツ
どこの医療機関が自分には合っているか?
都道府県精神保健福祉センターや保健所は医療機関の名前を教えてくれますが、公務員という仕事をしている立場上、知っていてもどこがいい、悪いということは建前上言えません。
ところが保健所の精神保健福祉相談員さんや市区町村役場の精神保健福祉士さんに顔を合わせて「実は」と話すと親切に教えてくれることがあります。
もし患者さん仲間がいていい医療機関を教えてくれればそれはラッキーなことです。
4.よい病院だと思っても・・・
お医者さんの人柄がとても良くて、にこにこしていて話も長時間聞いてくれる、でも具合は良くならない。
ということがあります。
そういった医療機関に通院している患者さんの話を聞くと、とてつもない量の投薬を受けていることがあります。
昔ながらの投薬センスを持っている医師は昔の教科書に書かれているような対応で、Aという抗精神病薬を出して副作用でアカシジア(足がむずむず、突っ張るような感じで冷や汗が出る)、ジスキネジア(不随意運動、口がもごもごするなど)が出たらアキネトンなどの抗パーキンソン剤で副作用止めをします。
最近の教科書でも抗パーキンソン剤を使って副作用を制止するように書いてあるものもありますが、「薬に薬を重ねる処方はいけない」と最新の教科書には書いてあります。
A薬の副作用止めにB薬を出してさらにその副作用止めにC薬を出すような処方をされている患者さんもいます。
また、抗精神病薬の力価、CP換算値というものがありますが(検索するとCP換算値計算サイトが出てきます)、その値が500以上、600から800、1000を超えるようになると過鎮静といって全く起き上がることもできなくなり、一日中寝たきりになる人も多いです。
抗精神病薬を何種類も出されていないか?自分の飲む薬を医師任せにしないで自分で調べる、疑問点があれば医師に聞いてみることをお勧めします。
患者さんは自分の病気に出されている薬については
医師と対等に話せるぐらい調べるといいと思います
抗精神病薬は単剤処方が原則です。
複数の抗精神病薬が出ている場合にはその理由を医師に聞いてみましょう。
減薬、少ない薬で治療しようとする医師は一般的にはいい医師と言えます。
必ず減薬処方の医師は名医なのかというと、必要な薬までどんどん抜いてしまうとまずいです。
例えば双極性障害の人は維持療法として症状再燃予防のため、ムードスタビライザーや抗精神病薬を投与されていることが多いのですが、その必要な薬まで抜くと一気に躁転することがあります。
統合失調症と他院で診断されていて抗精神病薬で過鎮静(ちなみに過鎮静は薬物による人工的ロボトミーとも言われています)にされていても実は発達障害で、少量の薬と漢方で十分な場合もあります。
しかし本当に抗精神病薬が必要な統合失調症の人の薬を抜いてしまうと入院するまでに症状が悪化しかねません。
病院の噂の真偽をきちんと正確に調べて聞けるといいのになあと思います。
5.精神科医療に求めるべきニーズ
精神科医で長く話を聞いてくれる精神療法をする医師は稀有です。
良心的で少なくとも10分以上話を聞こうとする医師は1日で100人近い患者を診てヘトヘトですが、精神科医は基本的に精神生物学、精神薬理学の専門家です。
熱心に論文を書いている医師はそういった生物学的分野の研究をしている医師が多いです。
精神科医にカウンセラー役を求めるのは困難なことです。
夫婦関係の問題をどうやって解決したらいいか、学校、友人、仕事のストレスをどう解消したらいいか、お金持ちになりたいけどどうしたらいいか、医師に聞いてもそのための根本的解決をする薬はありません。
ただ、どうにもイライラする、うつになっているということは投薬治療の対象になるでしょう。
臨床心理学も勉強して臨床心理士、公認心理師を取得する医師は少なくとも精神療法が必要と考えている医師ですので頼りになりそうです。
だから必ず精神療法を上手に行ってくれるかどうかは、時間があるからその医師がカウンセリングを上手に行えるかによります。
心理職もカウンセリングを上手に行えない人も残念ながらいるので、それは同じことです。
6.心理職がいる医療機関を探す場合
心理職が勤務している医療機関だからといって必ずカウンセリングが受けられるわけではありません。
医師がカウンセリングの必要性を決めることが多いですのでカウンセリングを受ける優先順位が低いと思われるとカウンセリングが受けられない場合があります。
医師の当たり外れを上で書いていますが、心理職の当たり外れ、相性の合う合わないは大きな問題です。
無理に相性の合わないと思えるカウンセラーのカウンセリングを受ける必要は全くありません。
カウンセリングを受けたいと思えばそれ自体がニーズなので、別機関を探しても受けたいものです。
なるべく保険適用が効く範囲でカウンセリングを受けたいですね。
ただ、自営や有料のカウンセリングで流行っているところは、高額でもそれだけのお金を払ってカウンセリングを受けている価値はあるでしょう。
懐具合と相談して受けてみてもいいと思います。
また、無資格の心理カウンセラーでも腕がいい人がいるのも事実です。
7.その他
※ いい精神科医がいるのにカウンセラーがいなくて困っている場合
投薬センスがいい、人当たりがいい、短時間でもきちんと丁寧に対応してくれる名医のところには続けて通いたいものです。
でもカウンセラーとの相性が合わない、カウンセラーがいない、そういった場合には素直に医師に相談してみましょう。
医師がわからないと言うなら日本臨床心理士会で「臨床心理士に出会うには」というホームページがあります。
ですが臨床心理士の腕前を保証しているわけではなく、あくまで臨床心理士がいる相談機関を紹介しているだけです。
狙い目は大学のカウンセリングセンターです。
大学院生の教育のために門戸を一般人に開放している場合もあるので比較的安価でカウンセリングを受けられます。
ただし若い院生がカウンセリングを担当することもあり得ます。
それでも教授が院生のスーパーヴィジョン、指導をしているので質はある程度保証されたカウンセリングが受けられる可能性があります。
若すぎて経験不足というデメリットもありますし、慣れていないからこそ真剣勝負でカウンセリングをする優秀な人もいます。
8.まとめ
医療機関選択はとても難しいことです。
自分に合った医療機関を探すことが大切です。
心理カウンセリングを受ける際、カウンセラーとの相性は大切ですが医師の投薬内容を含めた病院全体のクオリティを考えて選んでみてください。
※ 臨床心理士の方々へ
僕のブログを通じて萩野谷博士の司法面接トレーニングに参加してくださった人が何人かいるようです。
ご協力大変ありがとうございます。
萩野谷先生も大変助かったと話しており、みなさまのご協力に感謝しています。
多くの臨床心理士の被験者を引き続き募集していますので今後ともよろしくお願いします。
再度アナウンスを繰り返しておきます。
追記:先日案内させていただきましたが、萩野谷俊平博士が司法面接トレーニング実験被験者をサンプル数収集のため、募集しています。臨床心理士の方は報酬付きで司法面接を詳細に学ぶことができます。興味のある方は是非萩野谷先生にご連絡してみてください。
実験参加者募集案内pdf(クリックすると案内が開きます)
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