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◯ 臨床心理士養成廃止・公認心理師シフト進む中での大学・大学院の混乱・よい進学方法選びは?

1.はじめに

公認心理師採用側が混乱しているという話を書いたばかりですが、急に養成課程変更を迫られた大学・院側も困惑を余儀なくされているようです。

2.例・甲南大学の方針

公認心理師養成コースを新設した甲南大学(神戸市)が鳴門教育大と公認心理師養成についての協定を結んだという報道がありました。

甲南大学は従前、大学院において2018年度入学生に限り、臨床心理士養成が認められ、2019年度からは臨床心理士の養成を廃止しました。

また、甲南大学大学院は公認心理師養成のための課程も準備できないことから、公認心理師を目指すならば他大学院を目指すようにアナウンスもしていました。

反面、伝統ある心理学科を持つ甲南大学としてはきちんと公認心理師養成のためのコースを持ちたかったわけで、大学学部では公認心理師学部カリキュラムを2018年から開始しました。

その名は「公認心理師養成センター」で、学部教育では実習を含めて十分に対応ができるということでしょう。

さて、当初のアナウンスで大学院が臨床心理士、公認心理師双方に対応できないと発表したのは甲南大学としての誠実な対応だったと思います。

そしてここも心理学教育では定評があり、多くの心理専門家を輩出している鳴門教育大と提携して大学院進学ルートまで確保、甲南大学学部-鳴門教育大大学院で公認心理師取得を可能にしたわけです。

甲南大学公認心理師センターパンフレットでは公認心理師養成指定法定25科目50単位取得すれば他学部他学科でも公認心理師取得可能と記してありますが、そこまで他学部他学科の学生が時間を費やすのは可能なのでしょうか?

公認心理師取得専属でもかなり多忙な学生生活になるでしょう。多分実習の密度の濃さで教職を超えます。

ここだけは大丈夫かなあと思いました。

3.信州大学の例

信州大学ホームページには公認心理師単位が学部では取得可能なよう、カリキュラムを鋭意整備中と記されています。

その後は実務経験2年を自分で積むか、公認心理師養成大学院への進学を勧めています。

4.大学・大学院教育の実情

さて、甲南大学と信州大学がたまたま目に付いたので申し訳ないのですが、俎上にのせるつもりもなく紹介した。

こうやってできること、できないこと、工夫してできることが可能になったことを明示するのは大学・大学院の義務で、両大学とも真摯に対応してアナウンスしていると思います。

さて、臨床心理の世界に入りたいと他学部から心理学部などに編入してくる学生さんは昔からいました。

現在の単位取得計算では大学3年次編入では到底公認心理師必修単位は取得できません。

2年次編入でやっとなんとかなるかもしれません。

ただ、こういった編入はものすごい倍率になります。

1年次から心理の基礎をしっかり学びつつ、一般教養科目も余裕を持って履修したいのなら編入よりも再入学の方が断然おすすめとなるでしょう。

大学や大学院ではカリキュラムを組むのに苦労している・または公認心理師養成を諦めたところもありました。

相当数の公認心理師の大学教員求人が大学・院でありました。

公認心理師合格者教員数大募集をかけていた大学は大丈夫だったのかなあと気になります。

なぜ大学や院がこれほど苦労しているかというと、

⑴ 必須科目に対応できるだけの教員とその数がいないのではないか

⑵ 実習先確保が困難

実習先確保のためにはさまざまなつてがある大規模校の方が有利かもしれません。

実習先確保は教員のコネが物を言うでしょう。

その時に病院勤務歴がある教員がいる、医療機関が快く受け入れてくれる、実習に費用負担がそれほど生じないということは大事な要素です。

教育、福祉、産業、司法領域でどうやって実習を可能にするかも大きな課題ですし、この先これらにコネがある大学は有利です。

実習先はかなり理解がある、公認心理師勤務先でなければならないというハードルもあります。

⑶ 実習担当教員確保の困難さ

大学での実習は学生15人に1人の教員が、大学院では5人に1人の教員が必要になります。

さて、これまで小規模大学だと臨床心理士養成にも苦労して人員を切り回していたところが多かったのではないかと推察します。

大学教員がそれほどの時間学外で過ごせるようなマンパワーと予算確保は相当な苦労を伴います。

しかしそれらを文部科学省が手当てしてくれるわけではありません。

学部で80時間、院で450時間という膨大な実習カリキュラムはなかなか大学側にとってもハードです。

実は臨床心理士の場合、特に昔になるほど、基礎心理学、発達心理学、社会心理学で臨床をほとんどせず、実験室にこもっていたような教員が大学での教育指導担当者数確保のためにさらっと臨床心理士資格を取得していたことがありました。

公認心理師は基礎分野を含めて臨床心理以外の応用分野必修の上に実習もあり、実習担当の臨床心理教員は講義もゼミも持ちます。

ペーパー心理士だけでは勤まらないガチな課程です。

当座の間は公認心理師受験資格がある、公認心理師試験を受けようとしているという経過措置はあるのですが、そんな危ない橋を渡って養成課程を構築するのは実にスリリングでしょう。

小規模大学で教員数が少なく、アットホームさを売りにしていたところはもし教員がなんらかの理由で1人欠けてしまったら大打撃です。

実習にかかるコストを考慮すると、大規模、私立の学校が有利になるのではないかと思います。

5.臨床心理士養成とのからみ

公認心理師養成科目だけで切り回しが大変、今後の学生は公認心理師が国家資格だからということで臨床心理士と並べられたら公認心理師を選択するでしょう。

大学も公認心理師養成に力を入れたら臨床心理士までは手が回りません。

日本臨床心理士資格認定協会が最近、臨床心理士制度創設30周年を華々しく喧伝する雑誌を出していましたが、その日本臨床心理士報を見ると、臨床心理士養成のための第1種大学院認定を更新しなかった大学院が数校ありました。

今は過渡期なので両資格ホルダーが多いのですが、臨床心理士資格は5年後には相当衰退しているのではないかと思います。

6.総括

大学教員からの公認心理師養成課程整備の話を聞くこともありますが、相当な苦労をしている大学や大学院もあると聞きます。

学生が単位を落としてしまう、院卒後も試験に受からないというのは臨床心理士と同じで、自分でなんとかして頑張ってねということになるのですが、箱となる教育側で、養成できませんでしたという言い訳は通用しません。

学部長「すいません、うちのA教授が『疲れました。探さないでください』という書き置きをして失踪しました。」

学長「・・・公認心理師課程はもうすぐ大詰めだったろう?」

学部長「経験豊かなA教授には臨床心理学概論と心理検査学と臨床心理学特論医療心理学と人格心理学特論、司法心理学、スクールカウンセリングと産業心理学と医療機関実習と福祉実習担当をやらせていたので大打撃です。」

学長「代わりの人材は」

学部長「いません」

学長「むう、当学で独自の資格でも発行するか。それらしい名前はないのか?」

学部長「えーと、◯◯大学公認臨床心理カウンセリング認定プロフェッショナルセラピストとか?」

学長「それらしくもっともらしい単語を並べてあるだけだけどな」

学部長「当学は動物心理学専攻のB教授もいますから、エキスパートアニマルコミュニケーション心理セラピストもつけましょう」

学長「うむ、じゃ、それで」

というバカなことはないと思いますが、それに近いぐらい危機に追い込まれる教育機関は出てくるかもしれません。

公認心理師養成大学・大学院のホームページはどれもキレイです。

モデルを使って堂々としたカウンセリングの専門家を養成できると自信を持って書いてあります。

せっかくスタートした新制度ですから、その養成がうまくいかなければ公認心理師の質も担保できないと危惧しています。

心理の仕事にこれからつきたい人は臨床心理士と公認心理師両方の資格を一度はチャレンジして考えた方がいいと思いますが、今後どんどん公認心理師シフトが進む中、両方の資格を取得するのが無理だと思ったらすっぱりと公認心理師だけに絞ると就職では有利になりそうです。

教員、科目の充実、実習先の確保という点から考えると国公立大規模校か私立大規模伝統校が安全パイです。

私立はお金がある分有利です。

小規模大学でもきちんとしたカリキュラムを組めるところもあるでしょう。

大学偏差値にこだわらず、公認心理師専門職大学院課程がこれから創設されればそこは確実でしょう。

心理学が学べるからと曖昧に受験するのではなく、きちんと調べて話しも直接聞いてみるということがこれから数年は大事になりそうです。

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