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◯ 公認心理師に期待されるアンガーコントロールマネジメント

アンガーマネジメント(怒りのコントロール)は公認心理師が働くどの領域でも必ずその役割が期待されるでしょう。

アンガーマネジメントの前提として考えなければならないのは、怒りをマネジメントしなければならない、コントロールしなければならない、「怒りという感情は悪なのか?」ということです。

ひどくおとなしくて周囲からいじめられても自己主張できなかった子どもが思い切って「それはやめて!僕は嫌だ!」と言えたとき、いじめっ子がびっくりしていじめをやめたという話を聞いたこともあるかもしれません。

不登校児の話をじっくりと話を聞いていたにこにこしていたカウンセラーがあまりに理不尽なことばかり子どもが言うので「こら!学校行け!」と言い、びっくりした子どもの不登校が一発で治ったという話を心理の御大の先生から聞いたことがあります。

カウンセラーのアンガーマネジメントも「した方がいいの?」という課題があります。

クライエントさんが、理不尽なことをされて怒ったとき、そこは「よく怒れましたね」と医師やカウンセラーが言うところかもしれません。

喜怒哀楽というのは人間が普通に持っている感情なので、周囲から嫌われる「怒」と「哀」の感情こそが大切なものもしてカウンセリングの世界ではよく扱われます。

怒りは二次的感情です。

怒りが発生するときにはその裏に秘められた一次的な感情を理解することが必要です。

たとえばモンスターペアレントやモンスター客と言われる怒れる相手が目の前に来たとします。

・なぜこの先生はうちの子どもが置かれている悲しみや苦しみを理解してくれないのだろう、私も苦しい、悲しい、疲れた、ぐったりしている。

・なぜこの店員は何度言っても自分の欲求を理解してくれないのだろうか。

・総じて何度も私は自分が自己主張しているのに話が通じない、疲れた。

怒りはもっと親密な人間関係の間では愛して欲しい、理解して欲しい、話を聞いて欲しい、助けて欲しいという気持ちが無視された時にも起こります。

だから「アンガーマネジメント」ということで「自分の怒りを適切に(アサーティブ)に表現できるようになりましょう」と言う前に、なぜ怒るようになったのかそのメカニズムの理解も必要です。

やっと怒りを外に表出できたことのクライエントさんのについてほめる治療者は多いでしょう。

ただ、治療者側がクライエントさんの怒りの矢面に立たないから怒りをほめることができるので、たとえばクライエントさんやその家族から怒鳴りつけられる、それを1時間以上受け止めなければならなかったとしたらどうでしょうか?

耐えられるのでしょうか。

治療者は我慢して怒りはいいものだとクライエントさんをほめてさらに火に油を注ぐことは正しいのでしょうか。

教育現場ではモンスターペアレントでなくとも、対応のまずさから普通の親が怒り心頭になることがあります。

そして教育現場でもその上の行政でもモンスターペアレントはスクールカウンセラーに介入してもらおうという動きも出ていましたが、これはどう見てもうまくいかない。

モンペアだからSCに丸投げしちゃおうというだけだと、責任ある管理職が対応するのではなくて「親がおかしいからカウンセリングなのか?」という敵意を増幅させるだけです。

医療現場でも感情のコントロールを失うのはパーソナリティ障害や躁状態の患者さんばかりではありません。

医療者が上だという意識や、患者さんをコントロールしようとすると怒り出す人もいるでしょう。

福祉サービスを受ける人は社会的養護を受ける子どもは親から愛情を与えられなかっただけに職員の扱いには敏感です。

老人も認知症で判断力が弱まっていれば基本的な感情、怒りにも忠実になります。

司法は怒れる人たちがコントロールを失って起こした犯罪、非行の教育を行いますますし、被害者は別機関でやるせなさを怒りにして周囲にぶちまけます。

怒りをよく出せましたね、という治療者はそのクライエントさんが置かれている状況にも注目して欲しいです。

自分の感情を素直に出せるようになっただけの話では済まない、家族や学校、会社でその人がどんどん怒りを出していくようになったことを不快に思うと、周囲との軋轢を生んでクライエントさんがもう治療に来られなくなる可能性もあります。

確かに心理職にはアンガーマネジメント、アンガーコントロールの役割は大きく期待されています。

ただ、誰のための何のアンガーマネジメントか見失ってしまうとクライエントさんを窮地に陥れることになってしまいます。

上司や教師から「カウンセリングしてこの人のアンガーマネジメントをしてください」はたいていうまくいかないで来談者をさらに怒らせるだけです。

被虐待、犯罪被害者、アダルトチルドレンもパーソナリティ障害もPTSDの人も本質的に怒りを内包しています。

アンガーマネジメントは周囲と本人が必要だと感じているときに効果的と思います。

動機付けをしっかりしないと失敗します。

その上で弁証法的行動療法を行ってみるとアンガーマネジメントには有効という経験をしました。

教科書に書いてあるように気をそらすことは感情のコントロールなります。

集団教育の効果も研究されていますが、ずばり絶対に必要で効果的というエビデンスがあるわけではないです。

怒りのコントロールは必要なのか?

家族からの、あるいは社会からの要請は正しいのか?

怒りから犯罪に至る加害者臨床をどうやっていくのか、課題は山積しています。

国家資格公認心理師ができました、それはとてもいいものに違いないし、特殊な能力を持っているに違いないからアンガーマネジメントを任せてしまおうという動きは出てくるのではないかと思います。

その誤解を行政が主導することはこの制度の信頼性を損なうことになると思うのです。

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