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◯ 危惧される公認心理師のメンタルケア

心理職は心理的にタフだからカウンセリングができるというわけではない、というのは心理職の人なら誰でも知っていることでしょう。

心理学部に進学する人はもともと自分の心理に興味があって、悩みを抱えやすい、だから心理の世界に入る人も多いわけです。

そこで人の悩みを聞く臨床の仕事は自分には重すぎるから、と実験、基礎、社会心理に進んで一般就職をするというのはある意味とても賢い選択です。

思い詰めるように一心に臨床しかない、という人がいい臨床家になるかどうかはわかりません。

こんな噂を聞いたことがあって本当かどうかはわかりませんが、臨床心理士の中には自分自身病んだ経験があって「だから病んだ人のためになりたいんです」と動機を臨床心理士試験で語ると落とされる、と。

臨床心理士会倫理規定には臨床心理士は自らの心身の健康を保つように努めなければならないと明記されています。

いろんな臨床家を知っています。

例外もありますが確かに現在進行形で病んでいる人は仕事どころではないでしょう。

自分が今辛くて寝込んだり仕事に行けたり行けなかったりだと、人のためには働けません。

スーパーヴィジョンという熟達した先輩の心理専門家に話を聞いてもらうというシステムもありますが、統計的にこのスーパーヴィジョンを受けている人というのは実に少ないです。

確か15パーセントぐらいだったでしょうか。

心理職は開業だと保険が効かないので1時間5千円から1万5千円ぐらいのスーパーヴィジョン料金です。

知人がアメリカに渡り正式な精神分析家の資格を取得して帰国後大学教員になったのですが、週5回のペースで教育分析を受け、1千万近くかかったと。

さて、心理職の51パーセントは200万円台以下の収入です。

スーパーヴィジョンを受けなければならないという建前論はよくわかりますし、理論的には僕もそのとおりだと思います。

公認心理師現任者テキストにもそう書いてあります。

ただ、長期間にわたってスーパーヴィジョンを受けることが可能な心理職がどのぐらいの割合でいるのかなあと思うわけです。

現職だけでなく新公認心理師も同じです。

国家公務員総合職でも家裁調査官でも地方上級心理職でもそうですが、多忙なセクションは深夜残業当たり前、医療を始めとした分野でも休日出勤当たり前の職場も多いです。

お金と時間、両方揃った余裕ある心理職はどれほどいるでしょうか。

もちろんクライエントさんにしてみれば、独特の個人的なクセに固まっていないで、常識的にカウンセリングの教えを受けて精神的に安定している心理職のカウンセリングを受けたいでしょう。

いろんなバックボーンを持ってやってきた公認心理師が誕生しました。

みんなばらばらに自分自身のやり方でやるのかなと思います。

臨床心理士試験の短時間面接でも見抜けないだろう心理職自体の病理性がマークシート式の公認心理師試験ではさらにわかりません。

実はそんな話をよく聞くのですが、心理職単独の職場だと心理職がストレス過剰になっても誰も受け止める仲間はいない。

「お前人間関係の専門家だろうから面白いこと言え」と飲み会で絡まれたという話を聞きました。

心理職が複数いる職場も難しい。

お互いの立場を尊重するあまり倒れそうになっている心理職に気づけない、気づいても声をかけられないで倒れてそのまま職場を去る人もいます。

心理職同士年齢、学派、職歴が違っていて、その違いを大切にし合うのでなくパワハラが起きることもあります。

病んでる心理職のカウンセリングを受けたいと積極的に思うクライエントさんはいないでしょう。

こうやって自分は乗り越えてやっています、ということでクライエントさんに共感して接することができるならそれは素晴らしいことだと思います。

国家資格公認心理師という箱は作ってみました。

でも箱を作っただけです。

旧来から課題となっている心理職のメンタルケアは当人以外誰も考えてくれないという事実に危惧を感じるのです。
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