公認心理師試験基礎分野不要論


1.基礎心理学とはそもそも何か?

前回、公認心理師試験に基礎心理学は必要なのか、という記事を書いたあとに周囲から少し反響があったり、自分でも調べてみました。

感覚、知覚、認知心理学を中核とした基礎心理学こそが心理学の王道、基礎を学べばおのずと応用が効く、臨床活動も可能になる、したがって公認心理師試験には臨床心理学の科目は不要だ、という見解も今回あったと聞きます。

また、それを敷衍していくと公認心理師養成課程でも基礎心理学のみで臨床科目は必要なくなるという説です。

基礎心理学にはどんな分野が含まれるかには識者によって定義が異なります。

日本基礎心理学会の基礎心理学の定義によると「感覚,知覚,認知,記憶,学習,動物行動などの基礎的な実験心理学や,歴史,原理,方法など行動やそれを支える心の働きについての基本的な問題」ということです。

定義者によっては、脳科学、数理統計学、果ては性格心理学、人格心理学からユング深層心理学まで含める場合もあります。

2.論点

学習、条件付けは臨床場面で使われる応用行動分析ABAで児童の問題行動の解決、自閉症児へのかかわりとして必須の知識です。

認知理論が認知行動療法の基礎となっていることも周知のとおりです。

脳科学はてんかん、リハビリテーション心理学、認知症の中核症状や周辺症状BPSDの理解には不可欠です。

脳科学分野で脳の異変が起きている部位と精神症状はアルコール依存でもトラウマ研究でも深く、無縁ではありません。

統計数理がわからないとエビデンスベイスドの実証的研究はできません。

知覚に関する分野は迷うところで、心理物理学として、知覚測定法は何か公認心理師業務をやるのに役立つの?

と聞かれたら答えに窮します。

心理学史は、心理学の成り立ちを理解するためには役立ちますが、ヴントの意識心理学は何か?という事柄は公認心理師の実務には関係なさそうです。

記憶分野は頻出ですが、どこまでどう重み付けをしたら臨床に役立つ実践的な公認心理師試験になるのかということについてはよく吟味する必要があります。

3.実際の試験

第1回試験、北海道追試でも純粋に基礎心理学で、臨床場面で関係なさそうな知識は配点配分の関係もあり、点数にはさほど影響はなかったような気がします。

公認心理師試験出題範囲ブループリントで記載されていてもこれら基礎科目は重点科目とはならなかったという印象も受けます。

4.関係団体の公認心理師研究活動への認識

ここで大事なのは公認心理師法の、公認心理師の業務の定義です。

(定義)

第二条 この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。

一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。

二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

※ 以上ですが、どこにも公認心理師の職務の一環として研究活動が必要だとは書かれていません。

ちなみに話題の日本公認心理師協会でも「研究」が業務であるとは明記されていません。

公認心理師職能団体を分派分列を促進したという批判をされている公認心理師の会でも研修は行うと書いてありますが研究について明記されていません。

試験には研究方法を出題するけれども研究は仕事の中に入っていないよ、というやり方は齟齬をきたしていると思います。

ア 研究活動にも関与できるように公認心理師の職務範囲を見直す。

日本心理臨床学は現任者の学歴制限を見直して専門学校卒でも(今後専門学校での公認心理師養成課程も出てくるようですし)研究活動に関与できるようにする。

イ 添え物程度に公認心理師試験に出題して、実践重視とするなら基礎科目は出題しない。

ウ なぜ公認心理師の出題にこういった分野が必要なのかということをきちんと説明する。

※ ア、イは極論です。

現実的なのは「ウ」で、法律と試験範囲、シラバス(教育課程)が現在はばらばらです。

その整合性についてきちんと説明責任アカウンタビリティーを果たして欲しいと思うのです。

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