◯ 公認心理師のサイコロジカルクライシス CPPPC

1.緒言

PTSDに罹患した人の苦しみは凄まじいものです。

第1回試験でも北海道追試でもPTSDは必須問題として扱われ、EMDRの文字を現任者テキスト以来、初めて問題文の中では見ることができました。

公認心理師にはPTSDに対する知識が必要だという事に関しては異議はありません。

それではその対応力についてはどう問われているのか?

こういった学説や技法があるからそうした方が良くて、タブーはこういうやり方だよ、というところまでしか試験問題は踏み込んでいません。

目の前にPTSDの人が来た時、「じゃあこういう目標を作ってフラッシュバックを起こらないようにしましょう、心的苦痛を減らしましょう」と自信を持って言える心理職はどれほどの割合でいるでしょうか。

日本でPTSDを専門にしている治療家は医師、心理療法家を総計してもごくわずかです。

厚生労働省発表ではPTSD生涯有病率1.1〜1.6パーセントと決して低い数字ではありませんが治療者は圧倒的に足りません。

厚生労働省では自然災害でPTSDの有病率は2倍に跳ね上がり、戦災に遭遇した人の半数、性犯罪では60パーセントの高率の人が罹患することになると明言されています。

しかもPTSDは最も心理療法家や医療関係者がバーンアウトして燃え尽きやすい領域です。

PTSD治療を主としてかかわる医療スタッフの平均バーンアウト期間は3年から5年が限度でしょう。

2次受傷を受けやすい領域です。

日本では医療機関、被害者関連機関、児童福祉領域の心理スタッフが日々かかわって努力をし続けていることに敬服します。

2.PTSDとPTSI

星和書店「身体に閉じ込められたトラウマ・ソマティックエクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケア」て初めてそういった概念があることを知ったのですが、イラク帰還兵がdisorder障害ではなくinjury障害だと言って自分はPTSIだと主張しています。

ただし、傷であるからには治癒される余地があるという意味だと同書は指摘しています。

3.治療の概要

PTSD治療に特化した日本EMDR学会で実施しているWeekendⅠ、WeekendⅡの心理職のトレーニングは、心理職の国家資格を得ている者が望ましいが、それは誰もいないので臨床心理士を有資格者としてトレーニング受講を可にしていて、それを明記していました。

今回公認心理師制度が成立したことによって、公認心理師も受講資格者になりました。(日本EMDR学会ホームページ参照)。

認知行動療法では持続エクスポージャー法のほかにトラウマについての認知を扱う認知処理療法(cognitive processing therapy;CPT)も治療法としてあげられています。

PTSDの疾患単位としての成立は1980年、ベトナム戦争後の軍人会の働きかけによるものです。

PTSDという疾患そのものはジャネの示唆があり、精神分析の源流ともなっていたもので、フロイトとブロイアーのヒステリー研究は1895年に出版されています。

不幸な戦争はPTSDの研究に多くの寄与をもたらし、続いて犯罪被害者ケアセンターなどが治療に当たるようにもなりました。

戦時に軍人によって提唱されたPIEモデル近接性proximity、迅速性immediately、期待性expectaciyはすぐにその場で復帰させることを求めています。(PTSD治療ガイドライン第2版 金剛出版)

4週間経つとASD急性ストレス障害がPTSD心的外傷後ストレス障害になるかどうかわかるから、今は様子見をしておいてそれまで見守りましょう、という言説を時々耳にしますが、いかがなものかと僕自身もカウンセリングをしている印象から思います。

怖いと言っている人を放置してしまうからで、クライエントさんは急性期に助けを求めています。

だからこそ集団であれば災害時にデブリーフィング(感情表出の受容のための構造的介入)が必要なわけですし、ナラティブな物語療法の端緒も第一次世界大戦当時から重視されていました。

デブリーフィングは今後も公認心理師試験に頻出と思いますが、単に一回デブリーフィングをして終わりというわけではなく、何度もトラウマケアの機会を与えるCISM critical
incident stress management
としてとらえられるべきだとされています。(前掲書)

4.PTSD治療の最前線

トラウマ治療に当たっては認知行動療法だけにエビデンス証明力があるわけではありません。

精神分析的な介入、催眠によって記憶を再構築する、除反応が起きて激しく感情表出してもそれを出し切らせることは古典的ながらも効果的です。

芸術領域、絵画領域や箱庭も効果的でしょう。

JEMDRA-HAPは日本EMDR学会が支援活動のために行っている団体です。

トラウマティック芸術療法も含め、ボディワークも実施します。

なぜそれを行なっているかというと効果的だからです。

以前、心理士が被災した子どもに絵画療法を行わせてフラッシュバックが起きたことが大々的にニュースとして取り上げられ、カウンセリングの危険性が喧伝されたことがありました。

心理支援計画の中でどういう位置付けで絵画療法が行われたのか、支援計画期間は十分にあったのか、これらの情報は記述されていませんでした。

ただ「公認心理師は国の資格だし、サイコロジカルファーストエイドの一員として被災地に行ってね」というそんな場面は今後もどんどん出てくるでしょう。

恐怖で固まった人々への感覚を追跡(トラッキング)し、こういった恐怖は災害でなくとも外科的手術、重篤な病気でもなりうることを知ることは大切です。

生命体リズムの回復とリラクゼーションが必須です。

変化する有機的心理(ペンデュレーション)、包み込むコンテイン機能、心理職は増大していくだろう期待に対して応えられるだけの素養を自ら育て、技能を磨いていく必要があります。

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 心理カウンセラーへ
にほんブログ村

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心理学へ
にほんブログ村

※ いつも行く近所の喫茶店の生け花。許可を得て撮影しています。

BF32B737-6CF5-4A52-B50B-3041560F4744