◯ カルロス・ゴーン〜独裁者の心理学

当時経営難に襲われていた日産に1999年、最高経営責任者として就任後したカルロス・ゴーンはコストカッターとして下請けに対するコストダウンを要求、また、売上げ不振車の生産中止を行うなど、さまざまな改革を行いました。

それまで経営難に陥っていた日産のを立て直した功績とともに、彼は年間10億円平均の役員報酬を手にしていました。

今回逮捕されたのは有価証券取引報告書虚偽記載、自らの役員報酬の申告漏れですが、それにとどまらず、役員報酬外でも自宅豪邸にかける経費を多く会社から出させていたという噂もあります。

政治経済の世界において独裁者は多く、全ての権限や利権を自己に集中させようとします。

一体どんな精神構造や心理機制が彼らをそうさせているでしょうか。

そしてこういった事案は全く心理職の業務とは無縁に思われるのですが、実はそうでもなく、何を把握して考えていくことが望ましいのかについても触れておきます。

独裁者について考えていきます。

妄想性パーソナリティ障害のクライエントさんに接したことがある心理職の人も多いと思いますが、クライエントさんの育ち方を考えると了解可能なことがあります。

幼少期から能力を超えた猛勉強を強いられ、努力を怠るとライバルから追い落とされるのではないか、親から怒られるのではないかと思う、職業生活を始めてからも高い地位を手にすると周囲から危害を加えられるという妄想から、根拠なくひどいパワハラをする場合があります。

周囲は自分を追い落そうとしている、財産を狙っているので確実に手元に置くためには違法な手段でも使っておかなければならない、それは真実かもしれません。

ただし、奇矯な妄想着想が伴い、部下がライバル社B社のことについて話している→「こいつはライバル企業からの回し者だ」となってしまい、人事上で部下にきわめて不利益をもたらすことがあるとそれは大きな害悪をもたらします。

財産を奪われるのだという恐怖に怯えていれば溜め込むしかないのです。

また、強迫性障害めいた人もこういった独裁者の中にはいるかもしれません。

自己愛が過度に肥大していて、自分こそはあらゆる賞賛と高額な報酬に値する人間だと思い込んでいるのかもしれません。

自分の中で自己完結していて人に迷惑をかけない強迫性障害の人がほとんどですが、ワンマンになり、「働かない部下は自分を害そうとしているから厳しくしなけれはならない」と思い込むと際限がなくなります。

とある企業のワンマン社長は目標設定前月比160パーセントを常に要求、それにこたえられない社員に失格の烙印を押してプレッシャーをかけていると聞きます。

「小さな権力を与えるとその人の本質がわかる」と言われています。

それまでは常識的で穏やかな人が、役割を与えられると急変して残忍になることがあります。

ジンバルドーの囚人-看守実験で役割が振る舞いに与える影響を調べようとしたところ、看守役があまりにも残忍に支配するようになり、実験を途中で中止せざるを得なかったこと、ミルグラムの電撃的実験では「これが被験者のためだよ」と示唆された人が致死量とされる電撃(フェイクですが)を流した、ということで、役割は人を変えます。

もし産業場面にいる心理職が勤務経験が長くなってしまうとその組織の社風に馴染み過ぎてしまい、世間の常識から乖離してしまうこともよくあることです。

ハードワークをモットーとして、講演会では質問者の近くまで行き、一対一の対話をしていたカルロスゴーンは、才能があり魅力的な人物という印象を与えたでしょう。

パワハラが起きやすい組織風土は厚生労働省で出しているパワハラ6類型にその行為が該当するという指摘を産業医が指摘したとしてもトップや上司は変わりません。

休養を要する診断書が精神科から出ても休ませないという、労働契約法5条違反の安全配慮義務にも注意を払えません。

ブラックと呼ばれる企業では社員の定着率が悪く、小売やサービス業では大卒者の半数が半年で退職していく企業もざらにあります。

1年後に新入社員が退職せずに働けている割合は、大卒、高卒、中卒で7割、5割、3割の七五三と言われています。

ワンマン社長がカウンセラーのところに来ることはありません。

心理職はそういったトップを変えることはできず、押し潰されそうなクライエントさんに会うことは多々あるでしょう。

民間企業なら労働基準監督署に訴えれ、査察が入れば企業は厳しい罰則を適用され、変革が始まるかもしれませんし、パワハラ相談窓口がもうかられている、公益通報を行う窓口もありますが、心理職はそれについて勧めることも制止することもできないわけです。

独裁者に憧れて入社した社員は)こんなはずじゃない、自分の最初にした選択は間違っていないはずだ」という認知不協和理論が働き、ますます洗脳されていきます。

企業によっては薄給のうちに新入社員をどんどん辞めさせてコストダウンを図っている場合もあり、これは悪質です。

クライエントさんにとって、どのようにして自分の人生を選んでもらうか、クライエントさんの心情をカウンセリングで扱うことは大事ですあ。

それに加え、独裁者について心理職も理解して説明できる言語を持てること(対個人・対社会)も大切だと思います。

専門家はあらゆる場面で瞬間的に答えを求められることも多いでしょう。

それに答えるか答えないかは立場上の問題があるので別としても、自己の内面に、時事について心理学的な理解に基づく解答を持っていることは必要だと思います。

心理職は世間から遊離している孤高の人ではないと考えています。

※ イラストはひなた画伯作品です。

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