◯ 双極性障害、うつの意外な常識〜公認心理師はどこまで踏み込める?
公認心理師編ばかり書いていますが、きちんと心理カウンセラーとしての本業に関係したことも少しずつ織り交ぜながら書いていきます。
1.公認心理師の専門性
ブループリントには精神疾患のその分類、治療法に至るまで多くの領域の知識の必要性が示されています。
ただし、実際に臨床の現場に出てカウンセリングを行っていくと試験問題の勉強のやり方、知識の習得をはるかに超える具体的な質問をクライエントさんからされる場合も多いものです。
これまで臨床心理士だったら対応できた、公認心理師だけの有資格者はわかってくれない、対応できないということになると困るわけです。
そういった理由でこの記事では両方の障害の知られているようで知られていない知識、そしてカウンセリングの現場で役立つ知識を紹介してみます。
生物学的な診断と医行為は医師の専権行為です。
心理には何ができるのでしょうか?
何を知っておかなければならないのでしょうか?
2.これらの気分変動には理由はない
カウンセリングをしていると「なんでこんな状態になってしまったんでしょうか?どうしてなんでしょうか?自分が怠けてて甘えているからなんでしょうか?」と教科書に書いてあるような自己否定発言をするクライエントさんもいます。
確かに仕事がうまく行かない、家庭が不和だろうとか、睡眠リズムが乱れてしまっているとか、思い当たる節がある気分変動もあります。
ところが理由が全くない気分変動もあるわけです。
「なんだか知らないけど落ち込む」「よくわからないけど眠れない」
「テンションが上がって仕方ない」
という話を聞きます。
さて、まず双極性障害(躁うつ病)ですが、うつの人はなだらかに段々と気分が落ち込んで学校や会社に行けなくなる、家族から見ていても少しずつ状態が悪くてなっていくということが多いものです。
ところが双極性障害の場合にはなだらかさはありません。
急にテンションが上がる、前触れなくがっくりと落ち込むという折れ線グラフのような気分の変化の仕方をします。
「なんで?」というクライエントさんの問いかけには「理由がないこともあるのがこの病気の特徴ですね」と答えています。
原因究明よりもどうやって養生するのかを考える方がいいでしょう。
DSM5(アメリカ精神医学界診断基準)では双極性障害はうつよりも統合失調症の近縁に分類されています。
統合失調症の人に対して「なぜあなたは幻聴が聞こえるのですか?」とダイレクトには聞かないでしょう。
双極性障害も同じです。
「なぜあなたはラピッドサイクラー(年4回以上躁状態とうつを繰り返す病態、双極II型)なんですか?」と聞かれてもクライエントさんにもわかりません。
うつの人でもこういった折れ線グラフ的な気分変動をする人がいます。
双極スペクトラム障害という、うつの中でも双極性障害に近い病態を示します。
近親者に双極性障害の人がいる、薬が効きにくい、効いても消失しやすい、薬で躁転しやすいなどさまざまな要素があり、医師も双極性障害と同様の薬で治療している場合があります。
クライエントさんが医師にこれら双極性障害や双極性スペクトラム障害について「早く治りたいです。薬を飲まなくてもいい生活になりたいです」と言っても医師は「治りませんが、ただ、維持治療を続けていると安定しますから一生病院には来てくださいね」と答えるしかないでしょう。
3.公認心理師の踏み込みどころ
臨床心理士は長い歴史を経て精神科勤務の人たちも多いので、比較的慣れているかもしれません。
医師からインテーク(初回鑑別面接)を依頼される、詳細な心理テストを依頼されて心理職が実施してみるとADHDなのか、双極性障害なのか、併発しているのかという見立てを医師に伝えることはできるでしょう。
公認心理師も従前の臨床心理士と同様の役割を取ってきちんと心理検査をできた方がいいわけです。
この辺りは初めて本格的に専門心理領域に踏み込む公認心理師の人ならば自己研鑽をして欲しいと思います。
確かに統合失調症も双極性障害も状態が悪化したときに理由がわからないことが多いです。
ただ、よくよく話を聞くとストレス、過労、睡眠不足は引き金になっている場合は多いです。
虫歯が痛いとか肩こりや腰痛がひどいとか、身体を矯正してもらうと症状がよくなる場合も多いです。
歯がほとんどない統合失調症患者さんに歯科に行ってもらったら数十年来の幻聴が消えた人がいたと中井久夫先生の著作に報告がありました。
水道管が壊れた、車が故障したなど小さく見えるストレスは実は重大です。
4.なんでも心因で片付けない
初学者に多いのですが、なんでも心因で片付けがちです。
胃痛は確かにカウンセリングで良くなることもありますので、それに終始していていいかというとそういうわけではありません。
過呼吸もまあ良くなりますが、隠れた循環器疾患がある場合もあります。
頭痛は脳腫瘍かもしれません。
せっかく公認心理師資格をこれから取得して心理の世界に入る人、これから心理を学び始める大学生の方にはグローバルな視点を持ち、真にクライエントさんの役に立つカウンセリングをして欲しいと思うのです。
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公認心理師編ばかり書いていますが、きちんと心理カウンセラーとしての本業に関係したことも少しずつ織り交ぜながら書いていきます。
1.公認心理師の専門性
ブループリントには精神疾患のその分類、治療法に至るまで多くの領域の知識の必要性が示されています。
ただし、実際に臨床の現場に出てカウンセリングを行っていくと試験問題の勉強のやり方、知識の習得をはるかに超える具体的な質問をクライエントさんからされる場合も多いものです。
これまで臨床心理士だったら対応できた、公認心理師だけの有資格者はわかってくれない、対応できないということになると困るわけです。
そういった理由でこの記事では両方の障害の知られているようで知られていない知識、そしてカウンセリングの現場で役立つ知識を紹介してみます。
生物学的な診断と医行為は医師の専権行為です。
心理には何ができるのでしょうか?
何を知っておかなければならないのでしょうか?
2.これらの気分変動には理由はない
カウンセリングをしていると「なんでこんな状態になってしまったんでしょうか?どうしてなんでしょうか?自分が怠けてて甘えているからなんでしょうか?」と教科書に書いてあるような自己否定発言をするクライエントさんもいます。
確かに仕事がうまく行かない、家庭が不和だろうとか、睡眠リズムが乱れてしまっているとか、思い当たる節がある気分変動もあります。
ところが理由が全くない気分変動もあるわけです。
「なんだか知らないけど落ち込む」「よくわからないけど眠れない」
「テンションが上がって仕方ない」
という話を聞きます。
さて、まず双極性障害(躁うつ病)ですが、うつの人はなだらかに段々と気分が落ち込んで学校や会社に行けなくなる、家族から見ていても少しずつ状態が悪くてなっていくということが多いものです。
ところが双極性障害の場合にはなだらかさはありません。
急にテンションが上がる、前触れなくがっくりと落ち込むという折れ線グラフのような気分の変化の仕方をします。
「なんで?」というクライエントさんの問いかけには「理由がないこともあるのがこの病気の特徴ですね」と答えています。
原因究明よりもどうやって養生するのかを考える方がいいでしょう。
DSM5(アメリカ精神医学界診断基準)では双極性障害はうつよりも統合失調症の近縁に分類されています。
統合失調症の人に対して「なぜあなたは幻聴が聞こえるのですか?」とダイレクトには聞かないでしょう。
双極性障害も同じです。
「なぜあなたはラピッドサイクラー(年4回以上躁状態とうつを繰り返す病態、双極II型)なんですか?」と聞かれてもクライエントさんにもわかりません。
うつの人でもこういった折れ線グラフ的な気分変動をする人がいます。
双極スペクトラム障害という、うつの中でも双極性障害に近い病態を示します。
近親者に双極性障害の人がいる、薬が効きにくい、効いても消失しやすい、薬で躁転しやすいなどさまざまな要素があり、医師も双極性障害と同様の薬で治療している場合があります。
クライエントさんが医師にこれら双極性障害や双極性スペクトラム障害について「早く治りたいです。薬を飲まなくてもいい生活になりたいです」と言っても医師は「治りませんが、ただ、維持治療を続けていると安定しますから一生病院には来てくださいね」と答えるしかないでしょう。
3.公認心理師の踏み込みどころ
臨床心理士は長い歴史を経て精神科勤務の人たちも多いので、比較的慣れているかもしれません。
医師からインテーク(初回鑑別面接)を依頼される、詳細な心理テストを依頼されて心理職が実施してみるとADHDなのか、双極性障害なのか、併発しているのかという見立てを医師に伝えることはできるでしょう。
公認心理師も従前の臨床心理士と同様の役割を取ってきちんと心理検査をできた方がいいわけです。
この辺りは初めて本格的に専門心理領域に踏み込む公認心理師の人ならば自己研鑽をして欲しいと思います。
確かに統合失調症も双極性障害も状態が悪化したときに理由がわからないことが多いです。
ただ、よくよく話を聞くとストレス、過労、睡眠不足は引き金になっている場合は多いです。
虫歯が痛いとか肩こりや腰痛がひどいとか、身体を矯正してもらうと症状がよくなる場合も多いです。
歯がほとんどない統合失調症患者さんに歯科に行ってもらったら数十年来の幻聴が消えた人がいたと中井久夫先生の著作に報告がありました。
水道管が壊れた、車が故障したなど小さく見えるストレスは実は重大です。
4.なんでも心因で片付けない
初学者に多いのですが、なんでも心因で片付けがちです。
胃痛は確かにカウンセリングで良くなることもありますので、それに終始していていいかというとそういうわけではありません。
過呼吸もまあ良くなりますが、隠れた循環器疾患がある場合もあります。
頭痛は脳腫瘍かもしれません。
せっかく公認心理師資格をこれから取得して心理の世界に入る人、これから心理を学び始める大学生の方にはグローバルな視点を持ち、真にクライエントさんの役に立つカウンセリングをして欲しいと思うのです。
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コメント
コメント一覧 (2)
今回の記事もとても心強く思い僭越ながら初コメントさせて頂きました。
統合失調症や 双極性障害の患者さんは、自分の意志に関係なく、襲ってくる気分の変動や幻覚に翻弄される苦しみを背負っています。内因性だから、心因ではないから、心理職はやれることが無いのではありません。
気分の波に如何に対処するか、幻聴に飲み込まれないためにどう工夫すればよいのか、患者さんと一緒になって対処法を模索することで、患者さんが陥りがちな過剰な自責や、孤独感が和らぐこと自体が時として薬物治療以上の効果をもたらす実感があります。
医者は受け持ち患者が多過ぎでもあり、残念ながら中には薬物療法以外を軽視する一部の医師もおり、そういった部分を十分に担いきれないため、心理職の力が必要なケースが多いと日頃より感じています。