◯ 公認心理師制度への危惧
2012.5.19奈良県臨床心理士会で山崎修先生が「心理士の国家資格化と日本臨床心理士会の動きについて」という記事を書いています。
このころと最近の情勢はかなり変化しているのですが、山崎先生がこのころに抱いていた危惧は現在全く心配がなくなったというわけでもないので、新しい問題提起材料ともなると思い、紹介しておきます。
山崎先生は臨床心理士の国家資格化の5つのデメリットになりうると思われる問題をあげています。
1、スクールカウンセラーは廃止されるかもしれない。もし存続しても校医(精神科医とは限りません)の指示のもとでしか動けなくなるかもしれない。
2、これまでのようなスタイルでのカウンセリングはできなくなるかもしれない。
3、臨床心理士が行ってきた災害時の心理的支援は不可能になるかもしれない。
4、医療以外での臨床心理業務や開業はできなくなる可能性がある。
5、大学卒ベースになるので病院における賃金は低下する恐れがある。つまり、今以上に生活の保障がなくなる。
「1」については、スクールカウンセラーの募集はそろそろ出始めていて、要領を読むと公認心理師も臨床心理士も同等の資格要件として募集されていて、時給もこれまでと変わらない(つまり、予算は引き揚げられなかったのだろうと推察されます)ことがわかります。
これまでどおり臨床心理士が公認心理師と同等にきちんと採用されていくのかどうかはわかりません。
長年スクールカウンセラーが勤めていた臨床心理士のみの有資格者が学校に採用されず、新しく公認心理師となった人が優先的に採用されることはあり得ます。
文部科学省のスクールカウンセラーの運用の位置付けはチーム学校を主体としたものになっていますので、校医が公認心理師法42条2項で公認心理師が「主治の医師」として指示を仰ぐ対象とはならないでしょう。
ただし、児童生徒に主治の医師が存在した場合には、公認心理師は従わなければならない、臨床心理士のみの資格保有のスクールカウンセラーは主治医の指示に従う必要はないということになります。
教育現場を経験した方ならわかるでしょうけれども、チーム学校での最高指導者は校長です。
スクールカウンセラーが、「主治の医師が」と言っても校長は公認心理師の言うことを守る必要がないと判断すればそれまでですし、チーム学校のメンバーの了解なく勝手にスクールカウンセラーが主治の医師に連絡したら公認心理師はクビになりかねません。
この辺りでスクールカウンセラーが今後困惑する事態が出てくることは容易に予想されます。
「2」についてですが、僕は精神科に勤務する公認心理師であってもいちいち主治の医師の了解を取らなくてもいい事柄は多いと思います。
クライエントさんがAという事柄を言った、そこで共感すべきか支持的にかかわるか、どんな技法で介入すべきかいちいち医師に指示を仰がれたら医師も持たないでしょう。
そもそもカウンセリングはクライエントさんの状態を良好にする目的のため、包括的な主治の医師からの指示によるものだと考えるべきです。
医師の指示を必要とするような重大な事柄についてのみ必要だろうと思います。
あくまでこれは僕の見解なので、公認心理師制度発足によって、カウンセリングに今後支障を来たす場面も出てくるかもしれません。
「3」の災害時における臨床心理士の心理的支援についてですが、DPAT(災害派遣医療チーム)Disaster Psychiatric Assistance Teamに臨床心理士が関与できるかできないかは今後わからないとしか言えません。
DPATは臨床心理士の臨床心理技術者を現地に派遣していました。
スクールカウンセラーの派遣事業も同じです。
国境なき医師団にも臨床心理士が加わっています。
これらの募集が今後公認心理師を中心としたものになるかもしれないという可能性はありますが、心理職全体のかかわりを否定することはないでしょう。
「4」は僕も危うく思っているところなのですが、精神保健福祉士や社会福祉士が独立開業することはありません。
心理カウンセラー事務所は何の資格がなくてもできるわけですが、そもそも開業カウンセリングをしていいか悪いかの法的根拠もないわけです。
公認心理師の業務独占化は今後数十年経たないと論議し尽くされないでしょうけれども、公認心理師の資格を持つがゆえに開業業務に制限が出てくることはあるかもしれません。
やはりそこには「主治の医師の指示」の解釈も問題になるわけです。
また、法的見直しが今後行われる際に公認心理師についてはなんらかの制限がつけられる可能性は随時あると思います。
「5」は、さもありなんという感じです。
現在でも公務員心理職を中途採用する場合には大卒者、院卒者で給与には差をつけている場合があります。
それまでに応募者が勤務していた経験値加算と同じです。
次年度新入学生の公認心理師受験はAルートの新院卒ルートが中心になり、Bルート学部+実務経験も加わるわけです。
Bルートがあるんだから公認心理師というのは大卒程度の資格で、大学院に行った人はたまたま行って資格を取っただけ、と無理な解釈をされてしまうと困るわけですが、絶対にないとは言えません。
何かと法的に守られることが多い公的機関と違い、小規模で独立した組織ではどんな判断が行われるかわからないわけです。
以上、2012年に臨床心理士の先生が抱いていた疑問は今でも公認心理師、臨床心理士の双方に共通する問題だと思うのです。

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2012.5.19奈良県臨床心理士会で山崎修先生が「心理士の国家資格化と日本臨床心理士会の動きについて」という記事を書いています。
このころと最近の情勢はかなり変化しているのですが、山崎先生がこのころに抱いていた危惧は現在全く心配がなくなったというわけでもないので、新しい問題提起材料ともなると思い、紹介しておきます。
山崎先生は臨床心理士の国家資格化の5つのデメリットになりうると思われる問題をあげています。
1、スクールカウンセラーは廃止されるかもしれない。もし存続しても校医(精神科医とは限りません)の指示のもとでしか動けなくなるかもしれない。
2、これまでのようなスタイルでのカウンセリングはできなくなるかもしれない。
3、臨床心理士が行ってきた災害時の心理的支援は不可能になるかもしれない。
4、医療以外での臨床心理業務や開業はできなくなる可能性がある。
5、大学卒ベースになるので病院における賃金は低下する恐れがある。つまり、今以上に生活の保障がなくなる。
「1」については、スクールカウンセラーの募集はそろそろ出始めていて、要領を読むと公認心理師も臨床心理士も同等の資格要件として募集されていて、時給もこれまでと変わらない(つまり、予算は引き揚げられなかったのだろうと推察されます)ことがわかります。
これまでどおり臨床心理士が公認心理師と同等にきちんと採用されていくのかどうかはわかりません。
長年スクールカウンセラーが勤めていた臨床心理士のみの有資格者が学校に採用されず、新しく公認心理師となった人が優先的に採用されることはあり得ます。
文部科学省のスクールカウンセラーの運用の位置付けはチーム学校を主体としたものになっていますので、校医が公認心理師法42条2項で公認心理師が「主治の医師」として指示を仰ぐ対象とはならないでしょう。
ただし、児童生徒に主治の医師が存在した場合には、公認心理師は従わなければならない、臨床心理士のみの資格保有のスクールカウンセラーは主治医の指示に従う必要はないということになります。
教育現場を経験した方ならわかるでしょうけれども、チーム学校での最高指導者は校長です。
スクールカウンセラーが、「主治の医師が」と言っても校長は公認心理師の言うことを守る必要がないと判断すればそれまでですし、チーム学校のメンバーの了解なく勝手にスクールカウンセラーが主治の医師に連絡したら公認心理師はクビになりかねません。
この辺りでスクールカウンセラーが今後困惑する事態が出てくることは容易に予想されます。
「2」についてですが、僕は精神科に勤務する公認心理師であってもいちいち主治の医師の了解を取らなくてもいい事柄は多いと思います。
クライエントさんがAという事柄を言った、そこで共感すべきか支持的にかかわるか、どんな技法で介入すべきかいちいち医師に指示を仰がれたら医師も持たないでしょう。
そもそもカウンセリングはクライエントさんの状態を良好にする目的のため、包括的な主治の医師からの指示によるものだと考えるべきです。
医師の指示を必要とするような重大な事柄についてのみ必要だろうと思います。
あくまでこれは僕の見解なので、公認心理師制度発足によって、カウンセリングに今後支障を来たす場面も出てくるかもしれません。
「3」の災害時における臨床心理士の心理的支援についてですが、DPAT(災害派遣医療チーム)Disaster Psychiatric Assistance Teamに臨床心理士が関与できるかできないかは今後わからないとしか言えません。
DPATは臨床心理士の臨床心理技術者を現地に派遣していました。
スクールカウンセラーの派遣事業も同じです。
国境なき医師団にも臨床心理士が加わっています。
これらの募集が今後公認心理師を中心としたものになるかもしれないという可能性はありますが、心理職全体のかかわりを否定することはないでしょう。
「4」は僕も危うく思っているところなのですが、精神保健福祉士や社会福祉士が独立開業することはありません。
心理カウンセラー事務所は何の資格がなくてもできるわけですが、そもそも開業カウンセリングをしていいか悪いかの法的根拠もないわけです。
公認心理師の業務独占化は今後数十年経たないと論議し尽くされないでしょうけれども、公認心理師の資格を持つがゆえに開業業務に制限が出てくることはあるかもしれません。
やはりそこには「主治の医師の指示」の解釈も問題になるわけです。
また、法的見直しが今後行われる際に公認心理師についてはなんらかの制限がつけられる可能性は随時あると思います。
「5」は、さもありなんという感じです。
現在でも公務員心理職を中途採用する場合には大卒者、院卒者で給与には差をつけている場合があります。
それまでに応募者が勤務していた経験値加算と同じです。
次年度新入学生の公認心理師受験はAルートの新院卒ルートが中心になり、Bルート学部+実務経験も加わるわけです。
Bルートがあるんだから公認心理師というのは大卒程度の資格で、大学院に行った人はたまたま行って資格を取っただけ、と無理な解釈をされてしまうと困るわけですが、絶対にないとは言えません。
何かと法的に守られることが多い公的機関と違い、小規模で独立した組織ではどんな判断が行われるかわからないわけです。
以上、2012年に臨床心理士の先生が抱いていた疑問は今でも公認心理師、臨床心理士の双方に共通する問題だと思うのです。
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