公認心理師数減は産業領域の危機

〜公認心理師不足は産業精神保健行政施策を崩壊させる〜

産業心理領域の心理業務を担っているのはその企業内部の心理職や外部の従業員支援メンタルヘルスプログラム推進企業(EAP)です。

日本の外部EAPはさまざまな業態で運営されています。

EAPを請け負う大手企業もあれば、個人開業でメンタルヘルスプログラムをパッケージとして売り込んでいる場合もあります。

産業カウンセラー資格を持っている人が主体でEAPをやっている、交流分析やキャリアコンサルタントが行っていることもあります。

さて、EAPの実際ですが、官公庁が入札をしていればパッケージプログラムを購入するので、EAP企業が応札しなければならないわけです。

パッケージプログラムは営業マンが各企業に売り込みにいく場合もあり、心理がその役割を担う場合もあります。

飛び込み営業で売り込む、新規開拓をしなければならないような場合には専属の営業マンがいるのでしょうけれども、メンタルヘルスプログラムを購入する企業に対してプレゼンを詳しく実施するのは心理の役目でしょう。

そしてこれらEAPプログラムにはもれなくストレスチェックテストが付随することになります。

厚生労働省が鳴り物入りで創設し、未実施企業に対しては罰則規定を設けたストレスチェック制度ですが、
歯科医師まで駆り出し、新たに公認心理師も加えたということには、今後さらに制度を推進させるという意図があるのでしょう。

まだ全事業場での実施に至ってはおらず、事業所社員数が少なければ少ないほど実施企業は少なく、業種別に見るときわめて実施率が低い業種もあります。

EAP、ストレスチェック制度を含む企業のメンタルヘルス施策推進は急務です。

企業は営利団体ですから、費用対効果がはっきりとしているものにしか支払いをしません。

EAPを導入するメリット、その辺りの論理や統計はたくさん出ているのですが、実際に義務化されたもの以外のパッケージを購入するかどうかはクライエント企業の自由です。

EAP団体の心理職が営業部長、総務部長、室長などを複数兼任しながら、プレゼン資料作成、プレゼン、メンタルヘルスプログラム実施、講演会、カウンセリングといった具合で、終電で帰るのが当たり前になっていることもあります。

これまで国家資格を持っていなかった心理職が実施していたわけですが、公認心理師があらゆる場面で主体になっていくことが期待されます。

特にクライエント企業は国家資格なのかどうかということを重視するでしょう。

EAPは産業領域の中でも非常に厳しくしのぎを削っています。

迎える企業はいわゆるブラック企業も多く、おざなりのメンタルヘルス対策をするだけということもあります。

結果として過労死事件や精神疾患による労災請求、裁判が増加していけば産業構造の根幹からの危機になります。

産業領域のEAP団体は手一杯で、カウンセリングが歩合制ならば受ける、パッケージプログラム購入の中にカウンセリング一式が入っているとカウンセリング回数をこなしても利益にはならないので、メンタルヘルス啓発教育に力を入れていくという傾向があります。

僕も産業領域で働いた経験がありますが、産業領域ではクライエント、家族、クライエントが所属している部署、人事、産業医、主治医と、とにかくめまぐるしく多くの人と会う、その合間に教育用教材を作成するという目の回るような多忙さでした。

過労死自殺を起こした挙句、厚労省の査察期日に合わせて心理職を採用、査察が終了すると心理職を解雇していたという話もあり、暗澹たる気分になります。

産業労働領域の心理業務はまだまだ課題が山積しています。

ところが企業にとっては業績が上がらないと一番先に切り捨てるのもメンタルヘルス部門の福利厚生です。

目に見える利潤が上がらないからです。

公認心理師が今後産業領域の主要要員となり、精神保健行政を他専門職種との多職種連携をしていくことを考えると、相当数の公認心理師を確保しておかないとならないと思います。

そのためには開業心理職の現任者受験資格見直しも行って欲しいものです。

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