◯ 司法公認心理師

公認心理師が今後、医療、福祉、教育、産業、司法の領域で活躍することになると一番登録人数が少なくて、それでいて法的知識も要求される、実践に困難さが伴う領域は司法分野ではないかと思います。

司法分野で活躍する可能性がある公認心理師としては、家庭裁判所調査官、鑑別技官、法務教官、矯正施設行動科学担当者、刑務所カウンセラー、科捜研研究員、心理警察官、保護観察官、社会復帰調整官、更生保護施設職員など(多分ほかにもあると思いますが)があるでしょう。

司法分野の公認心理師は、どの職務も今のところ公認心理師資格がなくとも働ける(社会復帰調整官は必須資格の一つになるかもしれません)と思われますが)ところが特徴のひとつです。

犯罪をした、取り調べをする、被害者であれば被害者はケアを受ける(警察)、処分を裁判官が決める、更生保護プログラムを受ける、復帰する際に更生保護施設に入所して社会復帰指導を受ける、保護観察官の下更生するという流れになります。

ここで問題になるのはやはり「主治の医師の指示」です。

例えば高校生が学校で腹が立つことがあったからむしゃくしゃして通行人を殴って重症を負わせた、その結果死んでしまった。

傷害致死事件となるわけですが、以前から少年には精神科の主治の医師がいた、あるいはこの事件に弁護人がついて精神鑑定を行うという事態になった際、家庭裁判所が主治の医師の指示を無条件に聞くというわけにはいかないでしょう。

少年には責任能力があったかなかったかも最終的には裁判官が決めます。

弁護人が精神科医に依頼して少年更生のための在宅支援プログラムを組んでも、家庭裁判所調査官が少年を在宅処遇は不可能だという意見書を出すということもあるわけです。

在宅処遇を望み、精神医療により診断名を欲しがってと治療的措置を望む加害者と、司法や行政の社会保安的な要請は相反します。

抗告審では家裁調査官の調査意見書が俎上に上げられ、被告弁護人側から批難されることもあります。

もう一つ、司法公認心理師を養成しなければならない時に考えなければならない点があります。

公認心理師法では実習プログラムの一環としての実習先に、裁判所、刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所、婦人補導院(売春防止法違反の更生対象者、年間一桁しかいないですが)入国収容所(不法入国者退去までの収容施設)地方更生保護委員会、保護観察所をあげていますが、実際、これまで学生の実習を長期間受け入れた場所はなかったはずです。

ごく短期間のボランティアはあったでしょう。

ただし450時間受け入れる余裕がある司法行刑施設はなかったわけです。

さて、行刑施設における精神科医療体制について考えてみます。

医療少年院における精神科医療は過去20年前に比べれば飛躍的に充実しているようです。

それでは通常の少年院は、医療刑務所でない刑務所はどうか。

社会内のように医療をすぐに受けられる体制にはありません。

更生率が数パーセントにも満たない小児わいせつ犯や、日本文化での処遇が困難な外国人少年や受刑者が精神科医療を受けたい場合は多いでしょう。

どこでどのように受刑者や少年を処遇しなければならないかを行刑施設が考えなければならないのですが、そこには大きな葛藤が存在します。

その中で医療にどうやってリファー(紹介)するか、主治の医師と連携を取るかは難しくなってきます。

また、司法は法と情状(病状、障害を含む)をめぐる戦い、論争の場で、心理臨床だけをカウンセラーが重視できるわけではありません。

塀を閉める鍵を持ち、開け閉めをする、手錠のかけはずしをすることも司法心理カウンセラーの仕事です。

仮退院、仮出所とその後の保護観察中の生活にも元受刑者、仮退院者、行政との対立は起こりえます。

公認心理師法は憲法、刑法からは下位法とみなされます。

公認心理師法が刑法や警察法、裁判所法を変えることは絶対にできません。

司法分野の公認心理師はいわば「あいだの人」として法と心理と医学の狭間に立たされるでしょう。

どのように司法現場の公認心理師が運用され、円滑に活動できるかは司法行政や行刑行政にかかっています。



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