「主治の医師の指示」から透けて見える公認心理師出題

しばらく時間が経ってまた問題文を見てみると、問題文の随所に「主治の医師の指示」に関する哲学が散りばめられているのだなあと思います。

直接「主治の医師の指示」に関する問題はありませんでした。

しかしながら例えばケース・フォーミュレーション(見立て、方針)に関する問題、クライエントと心理職との共同作業を重視するという点で、そこにはまだ主治医からの指示はありません。

医師団体では医行為はbiosocialかつサイコロジカルなものでもあると主張しているのですが、例えば医療機関では医師-心理-患者の合意がないと安定したケースフォーミュレーションは作成できないと思うのです。

それはもちろん他職種のコメディカルの専門的知見も参照にするという意味合いを含みます。

症状を維持するメカニズム、診断名はもちろん考慮しなければならないのですが、前回医師の指示で書いたように、医師の側には義務は何らありません。

心理士会ではそもそも「医師の指示」という文言を「医師の指示や意見を共有する」と書き換えて欲しいという要望を出していたのですが、結果的に公認心理師法は主治の医師の指示に従わないことにより行政処分を受けるという厳しい法律となりました。

ケース・フォーミュレーションに関する問題は、当たり前のことを当たり前ではあるけれども、それでも医療の中の心理職はその枠組みから外れてはならないという念押しだったというのは穿ち過ぎなのでしょうか。

行政機関から国民に対する意見照会であるパブリックコメント「公認心理師法第42条2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について」ではやはり同様の意見も出ています。

公認心理師に指示遵守の義務があるならば、医師に適切な指示を出す義務はないのか?

→公認心理師法上規定がないので義務はない。

例えばこれもすでに答えが出ているのですが、クライエントが医師に情報を伝えるのを拒んだ場合、パブリックコメントでも

要支援者の利益に資するようにするという観点から、「3. 主治の医師の有無の確認に関する事項」において、要支援者 の意向や心情を踏まえる旨の記載をしておりますが、頂いた 御意見を踏まえ、「4.主治の医師からの指示への対応に関 する事項」においても、同じ観点から「要支援者が主治の医師の関与を望まない場合、公認心理師は、要支援者の心情に 配慮しつつ、主治の医師からの指示の必要性等について丁寧に説明を行うものとする。」と修正しました。

との言及があります。
頑なに拒んだ場合にはどうなるのか、ここで患者さんとしてこのブログを読んでいる人もいるでしょう。

例えば医師との関係がうまく行っていない、心理職のことは頼りにしている、という場合で、医師に情報を伝える。

医師の指示をどういった場合にどのように仰ぐのか、ということについて心理職はクライエントと医療の間に立たされることになります。

丁寧に説明してもダメなものはダメということは経験済みの人は多いでしょう。

これは僕が医師と心理職との対立をわざわざ煽るために平地に乱を起こそうとしているわけではありません。

医師=管理者administrator
心理=治療者therapist

というA-T splitから比較的起こりやすい課題なので構造的にそうなりやすいのです。

構造は変わらないけれども義務を負う可能性は重いものです。

多職種連携に関する設問がありました。

医療機関でも患者さんの守秘義務はあり、同意を得る義務が発生するという回答が正解と思います。

実際のところは主治医の指示という点ではどのように運用されるかが気になります。

任意入院についての設問も同じで、任意入院している患者さんが即日退院を希望、主治医と話し合って欲しいところですが、患者さんが即時に帰宅したいと言い張ると心理職としてはどうしようもありません。

もし主治医がその日は別病院に午後から診療に行ってしまっていたらどうしようかとも思いあぐねます。

なかなか設問のようなモデルケースだけには行き当たらないだろうなあということを考えます。

曖昧な設問が多かったという感想をよく聞くのですが、現場はもっと曖昧です。

その不透明さを多く経験していた人はかえって正解を出しにくい設問もあったのではないかと思うのです。


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