心理カウンセラー・ひなたあきらからのメッセージ

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。 ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata★gmail.com(★を@に変えてください。)

「主治の医師の指示」から透けて見える公認心理師出題

しばらく時間が経ってまた問題文を見てみると、問題文の随所に「主治の医師の指示」に関する哲学が散りばめられているのだなあと思います。

直接「主治の医師の指示」に関する問題はありませんでした。

しかしながら例えばケース・フォーミュレーション(見立て、方針)に関する問題、クライエントと心理職との共同作業を重視するという点で、そこにはまだ主治医からの指示はありません。

医師団体では医行為はbiosocialかつサイコロジカルなものでもあると主張しているのですが、例えば医療機関では医師-心理-患者の合意がないと安定したケースフォーミュレーションは作成できないと思うのです。

それはもちろん他職種のコメディカルの専門的知見も参照にするという意味合いを含みます。

症状を維持するメカニズム、診断名はもちろん考慮しなければならないのですが、前回医師の指示で書いたように、医師の側には義務は何らありません。

心理士会ではそもそも「医師の指示」という文言を「医師の指示や意見を共有する」と書き換えて欲しいという要望を出していたのですが、結果的に公認心理師法は主治の医師の指示に従わないことにより行政処分を受けるという厳しい法律となりました。

ケース・フォーミュレーションに関する問題は、当たり前のことを当たり前ではあるけれども、それでも医療の中の心理職はその枠組みから外れてはならないという念押しだったというのは穿ち過ぎなのでしょうか。

行政機関から国民に対する意見照会であるパブリックコメント「公認心理師法第42条2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について」ではやはり同様の意見も出ています。

公認心理師に指示遵守の義務があるならば、医師に適切な指示を出す義務はないのか?

→公認心理師法上規定がないので義務はない。

例えばこれもすでに答えが出ているのですが、クライエントが医師に情報を伝えるのを拒んだ場合、パブリックコメントでも

要支援者の利益に資するようにするという観点から、「3. 主治の医師の有無の確認に関する事項」において、要支援者 の意向や心情を踏まえる旨の記載をしておりますが、頂いた 御意見を踏まえ、「4.主治の医師からの指示への対応に関 する事項」においても、同じ観点から「要支援者が主治の医師の関与を望まない場合、公認心理師は、要支援者の心情に 配慮しつつ、主治の医師からの指示の必要性等について丁寧に説明を行うものとする。」と修正しました。

との言及があります。
頑なに拒んだ場合にはどうなるのか、ここで患者さんとしてこのブログを読んでいる人もいるでしょう。

例えば医師との関係がうまく行っていない、心理職のことは頼りにしている、という場合で、医師に情報を伝える。

医師の指示をどういった場合にどのように仰ぐのか、ということについて心理職はクライエントと医療の間に立たされることになります。

丁寧に説明してもダメなものはダメということは経験済みの人は多いでしょう。

これは僕が医師と心理職との対立をわざわざ煽るために平地に乱を起こそうとしているわけではありません。

医師=管理者administrator
心理=治療者therapist

というA-T splitから比較的起こりやすい課題なので構造的にそうなりやすいのです。

構造は変わらないけれども義務を負う可能性は重いものです。

多職種連携に関する設問がありました。

医療機関でも患者さんの守秘義務はあり、同意を得る義務が発生するという回答が正解と思います。

実際のところは主治医の指示という点ではどのように運用されるかが気になります。

任意入院についての設問も同じで、任意入院している患者さんが即日退院を希望、主治医と話し合って欲しいところですが、患者さんが即時に帰宅したいと言い張ると心理職としてはどうしようもありません。

もし主治医がその日は別病院に午後から診療に行ってしまっていたらどうしようかとも思いあぐねます。

なかなか設問のようなモデルケースだけには行き当たらないだろうなあということを考えます。

曖昧な設問が多かったという感想をよく聞くのですが、現場はもっと曖昧です。

その不透明さを多く経験していた人はかえって正解を出しにくい設問もあったのではないかと思うのです。


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僕自身の公認心理師受験

◯ 受験まで

現認者講習を受けたのが5月、「あー疲れたー」と調子づいて遊び回っていたのが、「このままじゃヤバイかも」と思って勉強を始めたのが6月中旬という、受験まで3カ月のこと。

ブループリント、現認者テキストを中心に調べ調べ勉強してブログにアップしていたわけです。

直前になって「サイコロジカルファーストエイド!」「医療法!」「エリクソンの8段階だ!」と浮かされるように調べてアップしました。

公認心理師試験の受験範囲は幅広く、もしノー勉強で臨んでいたなら正答数マイナス30〜40点だったなあと問題を睨んで思い返すと、勉強しておいて正解だったと思います。

結構大きなイベントが試験直前にありました。

疲れ取れないうちに受験、こういう人は多かったでしょう。

◯ 直前

受験地に前日入り、ブログ記事は電車内や食事しながらアップしていました。

よく寝てシャワー浴びてから受験地に。

◯ 受験

某大学でしたが、かっちりとしたスーツ姿の女性が「◯◯したら(しなかったら)受験無効」と厳しく(試験なので当たり前ですが)説明、スマホを封筒にしまう2分前に自分の書いたブログを読み返し、「視床下部は摂食行動!」と理解したところで午前の試験開始でした。

◯ 午前中

サイコロジカルファーストエイドから始まってラッキー、割とすんなり解けていたのが、すぐ行き詰まりました。

大脳生理学は弱い、福祉、教育、産業、司法はわかるところはわかるけどわからないところはわからない、と必死でした。

元々仕事上で必要なので学んだ知識はしっかりと覚えていた、偶然正答できたところもあった。

詳しいはずの分野で早とちりした問題もあった、問題文を熟読しておけばよかったなあと思います。

◯ 昼休み

知人のいない会場なので1人でコンビニご飯を食べながらまた自分が書いたブログを見返していました。

◯ 午後

知識もケースも午後がかなり迷いました。

ストレンジシチュエーションは未学習だった、覚せい剤に身体依存がないのは知らなかったなあ、とかリーダシップ理論はもっと踏み込んで勉強すべきだったと思いました。

さて、受験を終わって思うことです。

1.公認心理師試験の目的

心理学に関する大学院入試レベルの知識、(あるいは国家I種試験に近いレベルの知識)が十分にあり、いわゆる「心理の専門家」と呼べる合格者にライセンスを与える。
(一般心理学や社会心理学を含む心理学知識がないと合格はできないでしょうから)

2.臨床心理士試験とは範囲や出題形式が違う

公認心理師法が通過してから心理士の過去問を練習のためにやったのですが、分野、問われている内容、形式が違います。
ブループリントでは「〜の心理」と書かれていても実際には法律、制度に関する知識問題も多かったようです。

3.五分野に関するまんべんのない法律、制度知識が必要。

医療、教育、福祉、産業、司法知識
は網羅されて出題されていたような印象を受けました。

「自分は医療をやる心理職だから司法は関係ない」

それは本当かもしれませんし、医療現場にいれば司法とは無縁に職業人生を送る可能性もあるでしょう。

ただし、公認心理師は心理のジェネラリストのための試験です。

もし病院に来たクライエントから「子どもが逮捕されて鑑別所に入ってしまった。このあとどうなりますか?」と聞かれたら、答えるかどうかは別として、答えられるだけの知識がある人間が公認心理師の資格があります。

始まったばかりの制度ですが、心理学に関するスペシャリスト兼ジェネラリストが求められている資格です。

どの現場に入っても「企業内でしかカウンセリングをしていないから児童相談所のことは知らない」と言うことは許されない専門資格ということを感じました。

何のためにこれだけの広い出題範囲を?という答えは制度実施後に試験見直しが行われたり、公認心理師が実際に仕事をしていく中で明らかになっていく事柄かもしれません。


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公認心理師試験で求められていたものは何か?

僕もようやく手元が落ち着いて、試験勉強の間に棚上げしていた仕事を片付け始めることができるようになりました。

受験期間中は激動、激震のように感じられる日々で、付け焼き刃の勉強期間は寝ても覚めても勉強でした。

さて、勉強中、最愛のハニーに公認心理師の試験範囲が広いことについて愚痴をこぼしたところ、「ふうん、公認心理師じゃなくて、『万能心理師』みたいだね」と言われ、まあそうだなあと思いました。

(ちなみに彼女からは僕が試験後に抜け殻のようになっていたので「ブログに書いてることと違うじゃん!ダーはもっと私を大事にしてよ!」と言われていますがそれはまた別の話です。)

心理職のどの資格でも同じですが、アセスメントはするけど診断はしないのが当然でしょう。

しかし、深い医療知識は心理職にとってどうして必要なのか?

という根源的な疑問に立ち戻るわけです。

Lewy小体症候群の症状について知らなくても心理職は遂行不可能というわけではないです。

ただ、診断された患者さんに接するのにLewy小体症候群だということを知ってかかわるのは十分に意義があります。

精神薬理学についてですが、医師が薬を処方する以上、服薬コンプライアンスにまでは公認心理師は踏み込めないでしょう。

これこれこういった薬理作用があるので患者さんの治療や症状増悪防止のために服薬してくださいとも心理職は知っていても言えないわけです。

ただし、もし患者さんが怠薬や拒薬をしていたらその気持ちを理解するのに薬理学は役立つでしょう。

(医師でなければ薬の作用機序がわからないので、服薬の重要性の認識をさせるのは医師の役割だと思うのです。もちろんカウンセリングの最中に、服薬してないということをクライエントが口にしたらそれは医師に報告するわけですが。)

医療領域においてはどうしても心理職がアセスメントという名の見立てを行って、どんな症状が前景に来ているからこの診断名の病気だろうという当たりはつけます。

うつ病という診断名でカウンセリングをしていたら、妙にテンションが高過ぎる=双極性障害?幻聴妄想が出てくる=統合失調症かな?

と思ったら、主治医にすぐ報告しないとまずいでしょう。

医療領域以外で働く心理職もアセスメントをしてDSM-5で疑われるような疾患や障害があれば専門医に紹介します。

主治医がつけた病名と違った症状が出現していれば、クライエントさんの同意を得て情報提供書を書くでしょう。

どんな治療を受けさせるかは主治医が決めます。

今回、公認心理師試験をおさらいして読んでいると、医師が行う診断、そして医行為として医師が専権的にしか行えない行為についての知識が多かったような気がします。

考え方の1つとしては、主治医が適切な治療を行うに際して心理職も医学、精神医学的知識を必要とするので心理的な援助を行うことが必要というものです。

長々と前置きをしましたが、公認心理師に必要な知識がこれだけ深く多様になっていると、どこかで必ず医行為とバッティングするでしょう。

とある市井の精神科医が「うちの病院では診断もできないような心理も看護師も要らない」言い切っていました。

患者さんの微妙な変化に気付き、診断名と治療方法が変更になるだろうと察知したら医師に報告、その結果変わったという経験は多くの心理職が持っていると思います。

その精神科医は患者さんに病名をつけて欲しいわけではないですし、薬物療法を心理や看護師にやってもらいたいわけでもなく、患者さんの状態を正確に把握、異変があれば報告をしてもらって対処したいわけです。

診療補助職ではなく、独立した判断と見立て、ケースフォーミュレーションを行うこと、そして指示を仰ぐというのはなかなかに難しく、しかも罰則規定まで存在するという非常に厳しいものなので高度な知識も必要となるわけでしょう。

特にALSの問題を帰宅してから復習して見ていたら、「何難しい顔してるの、ダー?」とハニーから聞かれました。

ALSはがっくりとQOLが落ちる、意思表示ができなくなってくる、苦しい。

そこでの心理的支援はひょっとしたら「安楽死」のように自発的呼吸が望めないのなら延命して欲しくないという患者さんの意思を尊重しなければならないかもしれません。

もともと在宅医療支援チームに心理職がかかわる例は多くは聞かないのですが、今後その必要性は高まるでしょう。

医師は、心理の意見を「ふうん」と参考程度に聞いて終わってもそれで終わりです。

公認心理師は医療機関外でも医師の指示を仰がなければならないし、患者さんが医師には秘密にしておいてくれと頼まれたら、今度は患者さんを説得しなければならない義務があるわけです。

医療領域の出題を見ていたら高度な知識に基づく判断、推論をしてから医師に伝えつつ、患者さんへのアドバイスなどの医行為は行わない。

そして医師の指示に従いながら患者さんの支援しなければならないというとてもアンビバレンツな役割期待があるのだなと思いました。

厚労省のガイドラインも今後改定の余地があると明記されているので現場が混乱しないような明確なものを打ち出して欲しいものです。


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