ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

このブログ運営者は産業と医療の中間領域のようなところでカウンセリングを行っている、世界の謎を解き明かす心理職です。

これまで司法、教育、福祉分野での心理職経験もあります。

このブログのテーマは僕が専門としている心理学に加え、スタートしたばかりの公認心理師制度の検証、カウンセリング全般についてです。毎日更新を目指しています。誰も読まなくても書きます。もし評判が悪ければ反省してやはり毎日書きます。コメントは他者の誹謗中傷でなければ掲載します。僕へのクレームは大歓迎。掲示板がわりに使っていただいて構いません。

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◯ Gルート公認心理師・中西美穂さんの葛藤

拙ブログの読者でよくコメントをくださる中西美穂様に割と強引?に近くお願いして寄稿をいただきました。公認心理師制度への期待を胸に第2回試験を通過、開業心理専門職としてこれからさらにフィールドを広げたいと思っている方です。この方の医療知識の奥深さと心理職としての造詣の深さは相当なものだと思います。

さて、以下原文を掲載させていただきます。

(以下中西美穂様寄稿文)

稚拙な文書ですが、良かったら引用下さい。

公認心理師は、非常に横断的な資格で「医療・教育・産業・福祉・司法」にまたがり相談や観察、分析、心理、健康支援を行う事は、これから公認心理師になろうと思っている方や公認心理師に合格された方にとっては、周知の事と思います。

私は家族がいて、妻であり旦那がいて、子供がいる状況なので、特にそう思いますが、出来るならステーキとグラタンとチャーハンくらい週に一度食べれるくらいの職業になって欲しいと思います。鰻とすき焼きが他の日に食べれるくらいだと同じ師業でも医がつく師業になります。博士号まで取る方は、とても熱心で慎ましく純粋な方が多くいます。

そして、教授も稼ぐ為に学問をするのは、醜い様な呪文をかけるかもしれません。学生の内は、魔法が妖精と共に解けない錯覚に見えるかもしれません。でも、術を持って実践部隊に出ると山は高いし海は深いなんて事は、良く有ります。心理師の成長モデルは、そういう様々な意味合いも込めての成長モデルだと思います。

先に言ったステーキとグラタンとチャーハンは、私達の心と胃袋を豊にし、今日あった上手く行かなかったクライエントとの割り切れ無い気持ちや上司の理不尽な叱責も氷解させます。昭和枯れすすきみたいな状況では、クライエントを援助する側には、回れないと私は思います。 

本日、医師会から医師から昨今話題になっているコロナウィルスのスクリーニングから検査に進みたい意向を保健所に断られた件が話題になってました。

とんでもない事で早急に検査をすべきだと思いますが、医師会という団体はこういう声を各メディアや厚生労働省にちゃんと届けられる団体なんです。そこまで、公認心理師がなるには、この先何十年先かもしれません。

しかし、つまらない団体の利権争いより、公認心理師の声がきちんとメディアや行政に届けられる様に業界の取りまとめも今後必要だと思います。
公認心理師に求められるものについて、一日何なのか、考えて見ましたが、やはりソーシャルワーカーの視点は外せないと思います。

クライエントさんは、いつか飛び立つ日が来ます。その肩をそっと押すのが、公認心理師だと思います。その日の為に地域連携やら横の繋がりが必要ですし、医学的知識もあったに越した事は、ありません。私なんかは、有り合わせの材料で無理矢理、公認心理師になりました。

ペペロンチーノは、別名絶望のパスタと呼ばれるくらい少ない材料でパスタとして一品の料理になりますが、味付けや火加減、焦がし方、油の絡みは大切だと思います。

最後に、私自身、家庭を持ち子供がいる生活に今は慣れて大切にしてますが、人間理不尽に恋に落ち、どうしようも無い時間が、やって来る事も良くある事です。心理職は、女性が多いと聞きましたが、例えばシングルマザーになっても、困らないくらい社会的地位や収入が確保出来る事を望みます。

(以上)

中西さんは准看護師、ケアマネ、第2回公認心理師試験を突破、名古屋市内でカウンセリングを行っている方です。

mihonakanishiのブログ

https://mihonakanishi.hatenablog.com/

Gルート非臨床心理士合格者への批判があるのは承知していますが、中西さんの僕のブログへのコメントは常に心理・医学・行政を透徹した視点で見ている素晴らしいものだったのでそのまま転載します。

僕の「パーソナリティ障害に公認心理師が向かう時」記事では

http://hinata.website/archives/21891295.html

(以下コメント)

1. 中西美穂

境界性人格障害の方には治療契約がかなり大切なものになると思います。

心理療法における治療契約の意味↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhas/6/2/6_2_2_14/_pdf/-char/ja

深澤は次のように述べている。TA における契約主 義の根底にある人間観と信条は;

1私は OK,あなたは OK

2誰でも考える能力があり,自分の人生の最終的,究極的な責任者である

3自分の人生に,または人生から何を望むかというこ とを決められるのは本人だけ

4治療者のできることはクライエントが最終的に望んでいるものを実現することを邪魔しているものがあるとすれば,それを指摘してそれについて取り組むような環境をつくること

5二人で「クライエントが望む変容」のために分かち合う責任と,これを全うするために,互いにどのよの うな貢献ができるかをはっきりさせねばならない事である

と言っています。その通りですが、若く魅力的な女性が甘い香りの激しい台風をある時カウンセリングルームに持ってきて、全身全霊で悪意と善意を剥き出しにしたら時に1人のカウンセラーが適切な距離を持って心を乱さずに、もしくは乱された心を自己洞察しながら、枠組みに沿ってカウセリングを継続できるなら、かなりトレーニングを積んだカウンセラーだと思われます。

2. ひなたあきら

>>1中西美穂様
いつも鋭いコメントありがとうございます。

境界性人格障害の人は純粋です。

そしてその純粋さが医療者に向かう時、全幅の神格化された尊敬ともなり、次の瞬間には徹底したこきおろしによる否定にもなります。

崇め奉られて「いい気」になってしまうとその次に待っているのは陥穽です。

「先生がいなかったら死んでいました」と多くのカウンセラーが恐怖を感じるかもしれない、追い詰められたクライエントさんの発言をきちんと受け止めて返していくことが大切かと思います。

3. 中西美穂

心理専攻の方に一度境界性人格障害の方について相談した時に、(本人が困ってない点が問題点なんですよ)と言われました。ストンと心に落ちた良い話でした。

※ かなり説得力があるメッセージだと思います。苦悩を抱いているBPD、BPOの人もいれば他者が自己を領海侵犯してきているので私は悪くないと思いつつ苦しむ患者さんもいます。

「公認心理師試験のカウンセリング能力検出精度は?」

http://hinata.website/archives/21792521.html#comments
記事では

僕が心理職として悩みつつクライエントさんに相対していることを記述、コメントとして

1.中西美穂

いやいや、私も手探りな毎日です。この方には同じ内容でもこのニュアンスを強調した方が良いとか、個別性を踏まえた対応は、やっぱりしてます。
精神科病棟にいる時は、勉強不足で、境界性人格障害の方に振り回されたりしました。
介護分野に入り認知症リーダー研修の際に24時間シート↓
http://www.tojinkai.or.jp/chofukaen/especially/images/24sheet_sample.pdfを勉強し、人に対するアセスメントの仕方が変わったと思います。
当時拝見した認知症のパンフレットには、私は私らしくありたい。。。がサブタイトルでした。感傷的な様ですが、私も私らしくありたいとしみじみ思った記憶が有ります。
意向や満足度には、エビデンスが無いと駄目だとリーダー研修の講師に言われた時は頭が痛かったですが、専門職である無いに関わらず大切な視点だと思います。言葉で、有難うだったり、笑顔だったり評価は様々ですが、対象のレスポンスをキャッチするアンテナも必要だと思います。

をいただきました。

臨床心理士公認心理師両資格ホルダーで素晴らしい方はたくさんいます。学識が素晴らしく研究か優れていて精神療法が上手で人格が陶冶されていて後進の育成に熱心、そこまで絞り込むとどれだけの人が残るのでしょうか?

人間誰しもなんらかのウィークポイントはあり、もちろん僕にもあります。この試験は院卒臨床心理士も落ちる中で第2回試験をGルートで合格できた方は、大学院まで含めた6年間の経験と知識に比肩するものがないと合格点数には達しなかったでしょう。

さて、中西さんの寄稿文に戻ります。ステーキ、グラタン、チャーハン、栄養があって心もお腹も満たされる食事は、まだできたばかりの公認心理師制度そのものに対して必要です。

中西さんはご自身の謙遜が強く、ありあわせの材料で絶望のパスタ、ペペロンチーノのように公認心理師心理師試験に臨んだと記述していましたが、その少ない材料を絶妙な味に仕上げるのはシェフの腕前次第です。

僕は公認心理師制度はまだインスタント食品の域を出ていないのではないかと思っています。もしくは作ってみるまでは味がわからない、様々な材料を集めた寄せ鍋で、入れてはいけない「これ食材なの?」という素材を入れてしまって味の不協和も起こしています。

職業的にも食べられる資格として、そして国民、関連他職種、患者さん等さまざまな人が見たときに、この資格はきちんとした立派な料理、制度だと思われる資格になって欲しいと思っています。

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◯ パーソナリティ障害の診断基準・各クラスター・境界性パーソナリティ障害

1.診断

パーソナリティ障害の診断基準は何度も書いています。しつこいので何度も何度も書きます。

A群パーソナリティ障害は奇妙で風変わりなタイプ
妄想性パーソナリティ障害 (広範な不信感や猜疑心が特徴)
統合失調質パーソナリティ障害 (非社交的で他者への関心が乏しいことが特徴)
統合失調型パーソナリティ障害(会話が風変わりで感情の幅が狭く、しばしば適切さを欠くことが特徴)

B群 (感情的で移り気なタイプ)
境界性パーソナリティ障害 (感情や対人関係の不安定さ、衝動行為が特徴)
自己愛性パーソナリティ障害* (傲慢・尊大な態度を見せ自己評価に強くこだわるのが特徴)
反[非]社会性パーソナリティ障害 (反社会的で衝動的、向こうみずの行動が特徴)
演技性パーソナリティ障害 (他者の注目を集める派手な外見や演技的行動が特徴)

C群 (不安で内向的であることが特徴)
依存性パーソナリティ障害 (他者への過度の依存、孤独に耐えられないことが特徴)
強迫性パーソナリティ障害 (融通性がなく、一定の秩序を保つことへの固執(こだわり)が特徴)
回避性[不安性]パーソナリティ障害 (自己にまつわる不安や緊張が生じやすいことが特徴)

※ 厚生労働省「知ることから初めよう みんなのメンタルヘルス」から引用

さて、診断基準はDSM-5が医学書院から出ています。American Psychiatric Association DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引ポケット版は4,950円ですが何度も読み込むことは公認心理師試験を突破するには必要なことです。まだ持っていない方は買いましょう。(医学書院にそう書きます。と電話で話したら喜ばれました。)

著作権の問題があるので診断基準をそのまま掲載することはできませんが、
日本精神神経学会の林医師へのインタビューに境界性パーソナリティ障害の診断基準が掲載されています。(医学書院了解済)
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=41
また、MSDマニュアルプロフェッショナル版内で検索するとDSM-5各診断基準が明示されています。

こちらは確認中なのでurlは貼りませんが、MSDマニュアル内で「パーソナリティ障害」と検索すると各パーソナリティ障害DSM-5の診断基準が出てきます。

境界性パーソナリティ障害は常に死への欲求が強く、家族や治療者に対しても果てしない理想化して強い愛情表現をして、しばしば治療者はこの人たちと逸脱した性的関係を持つことがあります。(複数の教科書に記載あり。)かと思うと一瞬後には激しいこき下ろしが始まり、何もかも相手を否定する、ありていに言えばジェットコースターに乗せられている、洗濯機の中で高速回転させられているような気持ちになるわけです。

と言ってもこの人たちも同様に家族、他者、治療者に対して同様の感覚を抱いていて「どうして私の目の前の人はこんなに私を激しく混乱させるのだろう」と思っています。したがって境界性人格障害Borderline personality disorder ; BPDの人たちは精神科治療現場でも厄介者扱いされることも多いのですが、本人は生きていることだけで苦痛を感じ、常に死への欲求を抱いていることが特徴です。

慢性的な空虚感を感じていることも多く、したがってOD過服薬やリストカットをすることもしばしばです。医療者は救命のために仕事をしています。

こういった患者さんの治療も行わなければならないのですが、自らを傷つける行為をする患者さんへと治療者が陰性的感情を抱くこともあります。OD、リストカットは内科救急や外科医療者よりも精神科心身管理者の医師が患者さんにより強い陰性的感情を抱くことが多いようです。

「薬は君を守るためにあるので傷つけるために処方しているのではない」「これが続いたら投薬治療はできなくなる」管理的な医師の言葉に攻撃性を感じて治療からドロップアウトしてしまう患者さんもいます。BPDの患者さんはセンシティブで、「人格障害」という言葉も嫌う人がいます。診断名をはっきりと言わない医師も多いです。

DSM-5がディメンション(あたかもグラデーションのような)診断基準システムになったとしてもDSM-Ⅳ-TRの多軸診断システムを捨て去っているわけではないです。

BPDは双極性障害、幼少期に虐待を受けたPTSDやC-PTSD 、不安症、統合失調症、物質・行動依存などあらゆる疾患との併存がありえます。うつ病性感情障害は約50パーセントとも言われています。「境界性パーソナリティの精神療法」成田善弘編

※ C-PTSD 複雑性慢性型心的外傷後ストレス障害Complex post-traumatic stress disorder はICD-11で初めて独立した疾患単位として取り上げられるようになりました。手ひどい(しばしば性的な)虐待や性被害体験はC-PTSDを引き起こします。なおトラウマ研究者Judith Lewis HermanはBPDそのものが被虐待体験があることがほとんどなのでC-PTSDの中に概念化することを提唱しています。

2.歴史的変遷

BPD概念歴史は精神分析の歴史とともに始まります。1906年精神分析家Paul Federnが、神経症のはずなのに精神病状態を示す患者について「潜伏性精神病」と名付けたことにこの中間的な病は始まります。1950年代にはこの境界例が疾患単位なのかそれとも他の病気の亜型なのかについて激しい論争が起こりました。前述書「境界性パーソナリティ障害の精神療法」にも精神分析家がこの境界例に多く関わって来たことが述べられています。

統合失調症ならば精神分析の対象にはならず、神経症圏ならば対象になるからです。Melanie Kleinの対象関係論は部分対象としての「よいおっぱい」「悪いおっぱい」の全体対象として見られず、悪いおっぱいの乳首を思い切り噛むような心性が境界例の人格構造を表しているような気がします。

精神分析学者Otto Friedmann Kernbergは境界例をパーソナリティ構造そのものの特異性に注目、境界パーソナリティ構造Borderline personality organization - BPOを仮定、広くBPO水準の中でsplitting、all-or-nothing thinkingの中で生きる自我同一性の拡散があると指摘しました。

Michael Balint1968年著の「治療論から見た退行」では彼が精神分析学者として、境界例患者には幼少期に築かれていたはずのエディパルな人間関係を他者と結ぶことができない「基底欠損領域」の存在を指摘しました。John G. Gundersonらが怒り、強い抑うつ感情、一時的な妄想様体験、不安定な対人様式について境界例研究を進めました。

境界性パーソナリティ障害がひとつの疾患単位として確立したのは1980年、DSM-Ⅲからです。このパーソナリティ障害概念確立にはそれまでの精神分析学者たちの膨大な研究が影響していたのは言わずもがなです。

BPD概念の理解、そしてこの苦痛を常に抱えている人たちへと共感するためには精神分析学概念の理解は必須と考えます。BPDの人たちは苦しみを常に抱えている。それを無視して虐待なんかなかったでしょう、あなたや他の治療者が作り出した偽の記憶でしょう。こういった侵襲的な 治療家も数多くいます。

3.治療

BPDはクラスターB群の中では最も苦しみを訴えることが多く、治療を求めて医療機関を受診することが多い層です。米国精神医学会治療ガイドラインコンペンディアムAmerican Psychiatric Associdtion Practice Guidelines for the Treatment of Psychiatric Disorders COMPENDIUMでは力動的精神分析療法の有効性がRCT randomized controlled trial無作為割付対象試験によって示されたとの紹介があります。もう一つの効果的治療法は後述する弁証法的行動療法、Dialectical Behavior Therapy, DBTです。

⑴ 薬物療法

薬理的学治療は日本の精神科で行われている第一選択肢です。というのも精神分析や弁証法的行動療法DBTを行う機関は僅少です。さて、コンペンデァアムに戻ると大うつ病症状には抗うつ剤SSRI、そしてその不安のあるBPD患者さんにはベンゾジアベビンBenzodiazepine系抗不安剤の投与が行われます。(ただし、Benzodiazepineは解離を勧める、脱抑制から感情や行動のコントロールが困難になるので使用。控えるべきだという意見も根強いです。)

双極性障害を併発している場合も多いですし、感情の障害の病であることから、Carbamazepine、商品名テグレトール、Sodium Valproateバルプロ酸ナトリウム商品名デパケン、Lithium carbonate炭酸リチウムなどのムードスタビライザー気分安定剤による治療が行われています。

コンペンデァアムには掲載されていませんがLamotrigineラモトリギン、商品名ラミクタール、Topiramate、トピラマート、商品名トピナも使用されています。これもコンペンデァアムには記載されていませんがSSRI無反応な患者さんも多いことから定型、非定型抗精神病薬も使われています。

⑵ 弁証法的行動療法DBT

DBTはMarsha M. Linehanによって編み出されたBPDに特化した精神療法です。Linehan自身が厳格な家庭で育てられ、彼女の両腕は傷だらけ、運転していると思い切り突っ込んでしまいたくなると言います。

日本でも訳書は出ています。金剛出版「弁証法的行動療法」「弁証法行動療法実践マニュアル」等です。心理教育、弁証法的な第三者的な「賢明な心」で物事をとらえるという枠組みです。

病理的行動はしばしばBPD患者さんにとっては当たり前のことだととらえられています。不特定多数の異性との避妊をしない性行為を当たり前ととらえているティーンエージャーには賢い心でそれは常識の範囲外と伝えなければなりません。

マインドフルネスに基づいた日記カード記入します。自ら致死的な行為を行うのをやめることがターゲットになります。スキル訓練として苦悩に耐えるトレーニングをします。苦悩耐性は一時的棚上げ、問題から注意を逸らすことなど。

対人関係効率化、情動制御もターゲットです。DBTについて書くことは多いです。対人関係においては自己主張して断られたからといって自己否定されたとはとらえない、自己主張はいかなるときでも行う権利がある、情動制御について、気をそらすためにコインをテーブルの上に何枚も立ててみる、氷を握りしめたりキャンディを口の中に入れてその味わいに注意するというものです。呼吸法も推奨されます。

DBTは個人カウンセリングと集団でのグループカウンセリングを並行して行います。危機に陥った際には治療者に夜間でも電話をすることができます。DBTにはペナルティもあります。自傷行為を行った際には次のセッションに出られません。

⑶ トラウマをターゲットとした治療

統計ではBPD患者さんのうち被虐待体験を持っているのは9割という説もあります。 PTSDを併発している場合にはEMDRや持続エクスポージャー法PE Prolonged Exposure Therapy(私見ですがトラウマへの暴露は侵襲性が高くPEは苦しいのではないかと思います。)対人関係療法Interpersonal psychotherapy、IPTも効果的と言われています。その他プレインスポッティグ、ソマティックエクスペリエンス、ブレインジム等は公認心理師試験には出ないと思います。

※ ちなみにメンタライゼーションもBPD治療には有効と言われています。

4.総括

この病は漂泊の病とも言われています。自我同一性が確立できず、性別違和に苦しむ人、職業観を獲得できない、学校に行けない、社会に出られない人もいます。反面統計を取ると5年、10年単位では回復率も高く、診断基準を満たさないと完治する人、高い感受性を生かしてサービス、接客、経営、心理カウンセラー、精神科医になる人もいるのです。

心理職にとっては、どの精神疾患でも同じですが、きちんとケースフォーミュレーションを行いゴールを短期的にも長期的にも定めてクライエントさんの状態を安定化させることに心を砕きたいものです。

特にこの疾患は治療者が巻き込まれやすく(BPDの「操作性」と言われていますが、特に操作をしようとしているわけではなくBPDの人の防衛反応です。)治療契約や限界設定limit settingをきちんとしておき、しばしば絶望感に襲われるこの人たちの行く道筋を燭光でもよいので照らして欲しいと思っています。

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◯ COVID-19に期待される心理職の役割・学校休校措置・医療体制減弱化・感染症回復へ・支援の現状と課題

臨床心理士も公認心理師も心理職はあらゆる局面で人の不安に今向き合う必要性を感じてこの記事を書いています。以下、まずは知識を得ることが大切と思い、浅学ながら僕が焦点化して考えていることを書いてみます。

1.学校休校による医療体制減弱化

日経メディカルニュースの定期配信を受けているのですが、新型コロナウイルスCOVID-19 CoronaVirus Disease 2019の流行による休校措置は医療体制に危機をもたらすとの記事が掲載されていました。「シリーズ新興感染症 休校要請、6割強の医師が診療への悪影響を危惧しているとのアンケート結果が掲載されています。

考えてみればそれは当然のことで、幼子や小学生を抱えた看護師さんが子どもだけを残して家を空けるわけにも行かず、この記事によると30パーセント看護師さんが出勤不可能となる呼吸器外科もあるということでした。

日本はCOVID-19にメンタルパンデミックを起こしています。初動が遅かったという批判はあるものの、国家・行政は感染症対策はできうる限りのことはしていると思います。

人ごみや密閉空間に相対するのを人々が避けられるようにして休校、そして産官学の医療的措置は実は全て情報公開されているわけではないのですが、相当な対策を国家レベルで行っています。そのうちに情報公開されるかもしれませんし、されないかもしれません。

医療体制は人員が確かに不足するでしょうけれどもその補填計画は進んでいます。

ただ、医療関係者たちは学校の閉鎖措置は良かったと評価をしており、医療従事者も人の親ということでしょう。

2.感染者回復例

COVID-19に罹患したとしても80パーセントは軽症例です。ワクチンが開発されていない、ということであっても水分が不測していれば点滴、隔離、バランスよい食事と休養ということです。2020年3月3日日本の罹患者241人死者6人ということで致死率2.5パーセント弱です。(内閣官房)ちなみに世界中では罹患者89,977人死者31,08人で致死率3.5パーセント弱です。

PCR検査をクルーズ船3,063人に対して行ったところ、陽性者は634人、無症状病原体保有者延べ328人でした。(J-CASTニュース2月25日)

回復例はあると2月24日厚生労働省の基本方針にも述べられています。また、JETROビジネス短信3月3日によれば中国での3月1日の感染者報告は、同日1日で新規感染者202人、回復者2,837人で、同ニュースでは中国におけるCOVID-19感染はピークアウトしたとみなしています。

また、そのニュースによると、中国での3月2日午前0時時点で累計感染者数は8万26人、うち現在の感染者数は3万2,652人、累計回復者数は4万4,462人と内閣官房発表の数字だけ見ると感染者が爆発的に多いように見えますが、実は回復者も多いということです。よって中国では警戒レベル引き下げ(警戒をしないという意味ではないです。)をしました。

今日本では「なぜWHO(世界保健機構)やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)でパンデミック(爆発的大流行)レベルを最高度に引き上げないかという世論が大きいのは知っていますが、多分双方ともこういった事情からパンデミック警戒としながらもパンデミック宣言はしていません。

感染症対策は大切だと思います。密閉された空間の中で感染力が高いわけなので今回の出席停止措置や集会等の自粛要請は正しい対策だと思います。

3.不安定な人々の心にどう対処するのか?

日本臨床心理士会、日本公認心理師会がセーブザチルドレンジャパンと急性ストレス障害様症状が子どもに起きた際のパンフレットのようなものを作りましたが、辛口の言い方をすると「もっと早く、そして密度の濃いものを作っておいてもよかったんじゃないの?」と読んでみて思いました。

セーブザチルドレンジャパンは国際的NGOで、2月7日には湖北省に3万6千枚のマスクを送るなどその活動はめざましく、心理団体の呼応に答えただけのような気もします。

国境なき医師団も2月13日発表で物資の寄付や医学的援助活動を行っています。心理団体はお互いに何千万円の寄付をし合って会員から徴収した会費を使うのではなく、社会貢献活動として地域に物資援助をする、あるいは心理的支援の派遣要請を聞いてみるという活動が期待されたのではないでしょうか。

今子どもたちは自宅でゲーム三昧の日々を送っています。臨床心理士は文部科学省認定資格、公認心理師は文部科学省と厚生労働省の共管資格です。
子どもへの学習支援活動をオンラインなどで行うのは本来は文部科学省や各地方教育庁の仕事かもしれませんが、社会的な責任を持つ一般社団法人ですからさまざまな面からの支援活動をする余地はCOVID-19発症からずいぶん経過していたので文書を作りました、やってますよというアピールでなく、もっと実効性がある活動はできたのではないでしょうか。

サイコロジカルファーストエイド専門教育を受けた専門家が電話相談対応をするとか、養成されたSNSカウンセラーが休校になり不安な子どもの相談に乗ったりすることも大切です。休校して給食を食べられなくなった被虐待児や貧困家庭がどうなっているのかも気になります。厚生労働省は感染症対策部局だけでなくさまざまなセクションから人員を集めて対応に当たっています。

心理職は心理が専門だから心理の仕事しかしないということでは自ら地位を貶めるようなものだと思います。大学院卒の教育を受けているのですから、記録を取る、統計的に分析する、関係各所との連絡調整をするなどできることはたくさんあると思うのです。そして実際にやっている人々も多いと思います。心理職が不安定だとその揺らぎはクライエントさんに伝染します。心理職のみなさまにおいても家庭や自分を大切にしながら安定した気持ちで全ての人々への支援を行って欲しいと思う所存です。

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